令和4年8月25日午後2時

神戸地裁大法廷101号室にて

 

 

意見陳述書

 

令和4年8月25日

神戸地方裁判所 第2民事部合議係 御中

 

氏 名:末松 早苗

 

1 私は末松早苗と申します。猪名川町の住民で、現在猪名川町議会議員を拝命しております。

 

2 道の駅いながわ機能拡大プロジェクトの一環である、道の駅移転予定地購入について、私はどうしても納得がいきません、移転する必要性が全くないとしか感じられません。道の駅事業計画よりもなによりも、土地を購入することが第一の目的だったとしか思えてならないのです。

 

  なぜならば、町は移転理由について、現在の道の駅の老朽化や隣接している県道の渋滞などを掲げていますが、建物をリニューアルすればいいし、県道の渋滞は春や秋の行楽シーズン、土日祝ぐらいで、駐車場誘導を改善すればその渋滞は緩和されると認識しています。移転予定地は現在の道の駅を南に平行移動するだけで、行楽シーズンに於ける県道の渋滞解消には全くなりません。

 

  また事業用地は新たに買わなくても、無償譲渡された土地があります。

 

  更に事業計画についても、二転三転しました。温浴施設について収支見通しが甘すぎるという点で、住民の反対が多いようだとわかると、次は子育て支援センターを移転設置するとしました。ゲートウェイ型で交流人口を増やす目的の場所、観光施設に、福祉施設を設置する自治体がどこにあるでしょうか。私は近畿各地にある道の駅をいくつも訪れていますが、文化財など展示施設を併設する例はあっても、福祉施設を併設している例など見たことがありません。すなわち杜撰な事業計画、広大な敷地をとにかく何らかの施設で埋め合わせようとする苦し紛れの事業計画としか私の眼には映りません。

 

3 当初町は覚書により、事業者が決まらなければ土地購入はしないという停止条件を設定していました。当初の事業の進め方では、令和3年8月下旬に事業者を決定し、あと数か月待って土地を購入する予定でした。が、変更合意書により事業者が決まらなくても購入する、つまり停止条件を外すと変更しました。その変更合意書を作成した経緯や存在を議会に示すことなく、昨年3月12日土地取得についての議案が審議され5:9で可決されました。土地登記を見ると、その日のうちに町へ移転完了されています。

 

何故このように拙速に土地購入を推し進めたのでしょうか。情報公開請求を以てしても道の駅いながわ機能拡大プロジェクト検証委員会報告を以てしても、判断や意思決定のプロセスが不透明です。

 

4 昨年2021R36月に福田前町長の急な退任が公表され、急遽町長選挙及び議員補欠選挙が実施され、多くの住民の期待により道の駅移転反対派の岡本町長が誕生し、同時に私も町議会議員に返り咲きました。

 

当選証書交付翌日、入札不調になったことを知りました。79日に入札を予定していた事業者が辞退したのです。道の駅機能拡大プロジェクトは今日まで凍結状態となっています。

 

5 10月に「道の駅いながわ機能拡大プロジェクト検証委員会」による調査が開始されました。

 

今年2月には公表すると町長が約束した検証報告の公表が遅れました。この間私は百条委員会設置の提案をしてはどうかとも考えましたが、現在の町議会勢力では否決されることが十二分に予想されました。検証委員会結果報告の遅れも鑑み、他になすすべがない状況で考えに考え抜いて私と住民の方とで、住民監査請求を期限間際(3/11)つまりギリギリまで熟考の上で請求しました。

 

6 3月末に公表された『検証委員会報告』の目的は、道の駅事業において行われた業務の調査及び実態把握を行うことにより、行政に対する住民の信頼を得ることを目的に猪名川町が設置したものであり(道の駅機能拡大プロジェクト検証委員会設置要綱第1条)、本件に関係した職員等の法的責任を明らかにすることを目的とするものではありません。前町長や職員の行為が法律に従っているかどうかは、そもそも調査対象外です。つまり検証委員会の調査と本件住民訴訟の目的は全く異なっています、これでは、住民の疑問は全く解消できていません。

 

  この『検証委員会報告』では「用地交渉の議論や検討の過程を記録した資料がなく、判断理由が不明である」と記載されています。この報告を受けての町長のコメントは「大型事業の整備に当たって、公共事業の進め方や行政内部での動き、交渉先とのやり取りなど記録のあり方という意味でも、将来の町政運営の改善に当たっての教訓を残す貴重な報告をいただいたと思います。」また「これで透明性が確保でき、住民の疑問を解消できた」と神戸新聞(524日掲載)に語っています。町長の仰った透明性とは、役場の仕事の進め方に問題があったということが明らかになったということと私自身理解しています。法令に則り、一つずつ手続きを踏み、それを文書に残して次の段階に進む、というのが、公務員の仕事の進め方だろうと思っていましたが、これまでにないと言って良いぐらいの大型の公共事業に、町では何も記録を残さないまま取り組んで来たということが明らかになり、大変衝撃を受けていますが、このようなことがわかってきたことだけでも、検証委員会報告の結果は評価すべきものがあります。

 

  ですが一方で、先程も申し上げましたが、検証委員会の調査報告書は、本当に道の駅移転問題における住民の疑問に応えているのか、住民訴訟では、検証委員会で明らかにならなかったことを司法の場で明らかにすることを目的とする、つまりこの住民訴訟は、司法の場で、財務会計処理が不適切であったことを法の下で明らかにする、違法性を問うことが最大の目的です。猪名川町の総予算の約3%にも及ぶ用地取引に対して、余りにルーズで適当な行政の進め方を見過ごすことはできません。正に今だけ、自分だけ、お金だけを体現した行為は、法の下でしっかりと審議されるべきです。この道の駅移転用地購入問題を不透明なまま有耶無耶なままにして、猪名川町は今後衰退を止めることなどできるはずもありません。子々孫々次代に引き渡すことなどできません。次世代に対して希望の持てる状況をしっかりと残し、未来ある猪名川町を保たなければなりません。不退転の決意で命を賭ける思いでこの訴訟を起こしたことを、何卒ご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 

以上