オークションで『ホワイトタイガー』の、ぬいぐるみを買った。

毛が恋しくて…。
『エアーびーにゃん』抱っこすりすりすると、泣けてくるから。

写真だけだったから、顔もよくわからなかった。

紙袋に入ってやって来たのは、いかにも安っぽいぬいぐるみ。
不良品らしく、鼻があさっての方を向いている。

でも、毛が恋しかった私は、撫で撫でしまくり。
前足にぎにぎしながら、抱いて寝てる。

前にかいたかな?
以前からいる、着ぐるみのゴジラくんは『君誰?』と食い付きそう。
ゴールデン風お嬢様は『あら、新顔ね。』って感じ。ペンギンちゃんは誰にでも優しい。
びーにゃんは、とりあえず無関心。

お世辞にも器量良しとは言えない『とらちゃん』だけど、あどけない目で『じーっ』と、私を見る。

誰?
この目。
確かに、記憶がある。
それも、少しではなく、
かなり親しかった目だ。
あどけなく、元気でおしゃべりな目。
いつも私を見ていた。

スパイシー?

そう、スパイシーの目だ。

スパイシーはいつも一緒だった。
暗闇でも、ロフトの上から、私を見ていた。
視線が合うとすっ飛んできた。
仕事から帰るとおんぶして、歯磨きするときも、肩に乗って私を見ていた。

ある日、突然姿を消した。
夜、コンビニに行く時一緒に足元から出たのかもしれない。

外には出したことがないから、私が抱っこして、散歩してくれると勘違いしたかもしれない。

私は、気付かずそのまま、出かけ帰ってドアを閉めてしまった。
スパイシーは、寝てるとばかり思っていたのだ。

それっきり、探しても探しても、みつからなかった。
アパートの反対角の人が、その夜、猫が隅っこにうずくまっていたと言っていた。
怖くて動けなかったのだろう。
ドアが開けば、私が入れてくれると思ってたかもしれない。
同じドアがいくつも並んでいるのだ。

私が迂闊だったと、どんなに悔やんだろう。
悲しんだだろう。
路頭に迷わせ、恐怖の中に追い出してしまった。

甘えん坊さんで、器量も良いから、誰かに可愛がられてるよ。

そんな言葉を沢山聞いた。
然し、私の後悔はあれからづっと、私を許さなかった。

びーにゃんを失って、また私は、自分を責めている。
怪我をして、何ヵ月も、びーにゃんを訪ねてあげられなかった。
怖いとき、私は逃げ場所だった。
寂しい時、私は逃げ場所だった。

不注意で怪我をし、大好きな撫で撫でしてあげられなかった。

『虹の橋』の伝説は、辛い。
泣くこと、許さないから。


とらちゃんの目が言ってる。
『僕も、虹の橋のところにいるよ!!元気だから大丈夫!!』

スパイシーの明るい声が、
その目から伝わった。

偶然だろうか。

とらちゃんの目は、強く明るく、そう言っている。