ミクシィ日記と同じですが。

地下鉄のドアが開き、
無意識に歩みいる。
夕方、少し混んでる様子。
立っている人もいるが、空きスペースが目に入り、滑るように座った。
視界の端に長身の青年がつり革にもたれている、明らかに私を捉えている。
青年が私の前に立った。
顔をあげて視線を合わす。
屈託のない笑顔で私を見下ろし、長身をたたんで手を指しのべてきた。
躊躇いもなく右手で握手をした。
『こんにちわ。』と挨拶をした。
青年は屈託のない笑顔のまま、もう一方の手を指しのべてきた。
躊躇いもなく左手で握手をした。
交差した両手、『こんにちわ。』ともう一度挨拶をした。
青年は何か言いたげに、笑顔のまま、私の右手に顔を近づけてきた。
持つてに力は入っていない、『なぁに?』と問いかけてみる。
青年は大切そうに私の右手をとり、私の指先をかざして見ている。
マニキュアをしてなくて良かった。何となく思った。
とても嬉しそうに私の指先を見ている、一言も口を開かない。
乗客の視線が集まっているのを遠くに感じた。
二駅のところで、青年は私の手を一旦離し、降り口に向かった。
さようならも言わずに。
ドアが開く瞬間長い足ですーっと戻り、もう一度私の右手の指先をかざしてみて、屈託のない笑顔のまま閉まるドアの向こうに消えて行った。
何事もなかったように、私はもとに戻る。
何事もなかったような、風が通り過ぎるような出来事だった。
幻だったかも知れない。
そう思えるほど、見知らぬ青年は、穏やかだった。