ふたりが睦まじくいるためには・・・
新郎新婦は、キャンドルサービスのあと、深々と頭を下げました。
沸き返る多くの人たちに喝采の祝福を受け、披露宴の盛り上がりは最高潮を迎えたのです。
この幸せに満ちた披露宴は、白い薔薇に飾られた清楚な美しいものでした。
そんな会場で、新婦のお母様は、吉野弘さんの「祝婚歌」を、二人に語りかけるように優しい穏やかな声で朗読されました。
「祝婚歌」 吉野弘
ふたりが睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと
気づいてるほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
ふたりのうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が
自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気づいているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には 色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
ふたりにはわかるものであってほしい
この詩は、吉野さんが、姪御さんの結婚式にどうしても出席できず、代わりに祝辞として送った歌だそうです。
私には、新婦のお母様が、天国のお父様の祝辞を代わりに読み上げられたような気がしてなりません。お日さまの陽射しをいっぱいに含んだ洗濯物を抱き上げたように、贈られた詩の言葉が胸を温めてくれました。贈られた新郎新婦は、どんなに胸を打たれたことでしょうか。
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
ふたりにはわかるものであってほしい
この詩の前に、冗長な祝辞は野暮かもしれません。
黙して、お二人のご多幸をお祈りいたします☆彡

