●ウクライナの対露作戦としてのマレー機撃墜

【田中宇の国際ニュース解説】様より転載

 

「・・・ウクライナ東部でマレーシア航空機MH17を撃墜した「犯人」は、ウクライナ軍である可能性が最も高い。事件発生後、米欧日などのマスコミで、いっせいに「ロシア犯人説」が流布された。しかし米政府は7月22日、諜報担当官が匿名の記者懇談で「ロシアがMH17機の撃墜に何らかの直接関与をしていたと考えられる根拠がない」「ロシアがウクライナ東部の親露勢力にミサイルを渡して撃墜させたと考える根拠がない」と述べ、それまでの「ロシア犯人説」の主張を引っ込めた。」

 

「ロシアがウクライナの親露派に命じて撃墜させたという説を米政府が引っ込めたことで、ロシア犯人説は「無根拠な陰謀論」になったといえる。残っているのは、米政府が推定している親露派による誤射での撃墜説と、ロシア政府が主張しているウクライナ軍犯行説の2つだ。

 

この2つの説のうち、私は、ウクライナ軍犯行説の可能性の方が高いと考えている。その根拠は、7月21日にロシア軍高官が記者会見し、当日のレーダー映像を証拠として示しながら、ウクライナ空軍のSU25とみられる戦闘機2機が撃墜直前のMH17を追尾し、撃墜後に現場を旋回した上で飛び去ったと発表したからだ。「ロシアが言うことは全部ウソだ」という印象が報道プロパガンダによって蔓延しているが、今回の撃墜事件に関して最も説得力があった記者会見は、7月21日のロシア軍によるものだ。露政府と対照的に、米政府は説得性がある証拠を何も示していない。」

 

「こうした現状と、ウクライナ軍が撃墜して親露派のせいにしたか、もしくは親露派をだまして撃墜させたという、MH17撃墜をめぐるウクライナ軍の謀略を合わせて考えると、一つの推論が出てくる。ウクライナ軍は、膠着していた内戦を自分たちに有利なように進展させ、ドネツク陥落や内戦勝利に結びつけるために、親露派に濡れ衣を着せる目的で、MH17撃墜の謀略をやったのでないかという推論だ。」

 

「米政府は「全部ロシアが悪い」と声高に言うが、国際世論は、途上諸国を中心に、しだいにロシアの肩を持ち、米国を信用しないようになっている。この裏に、ロシアがウクライナ内戦に介入を控えている現実がある。」

 

●日本のメディアでは全くといってよいほど取り上げられていないのは、次のような事実。

「事故後、撃墜で194人の自国民が死んだオランダなどの当局者たちが撃墜現場を訪れようとして、ウクライナの首都キエフまでやってきたが、キエフから現場まで行こうとするたびに、現場の手前の地域でウクライナ軍と親露派の戦闘が起こり、キエフに引き返さざるを得ない事態が何日も続いた。東部の親露派がオランダの調査隊に語ったところによると、戦闘を起こしているのは多くの場合、ウクライナ軍の方だという。」

 

「マスコミは「現場に行こうとする調査隊を親露派が阻止した」「親露派がフライトレコーダーを盗んだ。破壊した」などと喧伝したが、実のところ、フライトレコーダーは無傷で保管されていた。各国の調査隊が現場に着くまでの数日間、毎日の最高気温が30度を超える猛暑で死臭が漂う中、親露派の人々は、国際調査団から依頼されたとおり、墜落現場で遺体を捜索してマーキングする作業を続けた。猛暑で遺体が腐敗するのを防ぐため、親露派は、支配地域で破壊されずに残っている冷凍貨物列車を現場近くまで移動し、そこに遺体を移動して保管した。オランダの調査隊は、これらの親露派の努力を絶賛し、感謝の意を述べている。この間、国際マスコミは「親露派が遺体を冷凍貨車に乗せて盗み出す?」などと喧伝していた。」