前回の記事内容の補足として、歎異抄を褒め讃える知識人たちを紹介します。

歎異抄は、徒然草・方丈記と並ぶ日本三大古典の一つで、親鸞聖人のお言葉を美しい文章で書き残された本で、日本で最も読まれる仏教書とも言われます。
また、日本にとどまらず、英語、中国語、韓国語など多くの言語に翻訳され、世界中で愛読されており、これほど多くの読者を持つ日本の古典作品は異例とも言えるでしょう。

歎異抄は大変多くの人々から褒め讃えられていますが、特にその中でも知識人が多いと思われます。

例えば、日本の三大哲学者の一人と言われる西田幾多郎は、

一切の書物を焼失しても『歎異抄』が残れば我慢できる
と言いました。

また、同じく三大哲学者の一人と言われる三木清も次のように言います。
万巻の書の中から、たった一冊を選ぶとしたら、『歎異抄』をとる
無数の本を読んだ人でしょうが、彼がその中のトップに挙げたのが歎異抄です。


著名な作家・倉田百三は、

「歎異鈔よりも求心的な書物は恐らく世界にあるまい。…文章も日本文として実に名文だ。国宝と云っていい」

と言っています。彼が歎異抄から深い感動を受けて著した戯曲・「出家とその弟子」は大ベストセラーになり各国で翻訳されました。フランスの文豪・ロマン・ロランが激賞した事でも有名です。

また、多くのベストセラー小説を書いた国民的作家・司馬遼太郎も、

無人島に一冊の本を持っていくとしたら『歎異抄』だ

と言っています。また、

読んでみると真実のにおいがするのですね。
人の話でも本を読んでも、空気が漏れているような感じがして、何かうそだなと思うことがあります。歎異抄』にはそれがありませんでした

とも言っています。

また、過去記事でも紹介したように、20世紀最大の哲学者の一人と言われるドイツのハイデッガーも、次のように言います。
「今日、英訳を通じてはじめて東洋の聖者親鸞の『歎異鈔』を読んだ。
弥陀の五劫思惟の願を案ずるにひとえに親鸞一人がためなりけり
(歎異抄後序)とは、何んと透徹した態度だろう。
もし十年前にこんな素晴らしい聖者が東洋にあったことを知ったら、自分はギリシャ・ラテン語の勉強もしなかった。
日本語を学び聖者の話を聞いて、世界中にひろめることを生きがいにしたであろう。
遅かった」

また、近年でも、著名な教育学者の齋藤孝氏が、

「この(歎異抄の)言葉そのものに出会うことができなかったとしたら、おそらく、日本人にとっては非常に大きな損失であったでしょう」

と述べています。

このように、日本で最も多くの人に読まれる仏教書である上に、日本や世界を代表する多くの知識人が褒め讃えるのが歎異抄なのですね。