前回記事の「七種の婦人」を説明します。

1:母の如し
 母親が子供を養育するように、愛情豊かに夫と接する妻
2:妹の如し
 妹が兄を尊敬し、慕うように夫に仕える妻
3:善知識の如し
 一切の人々を真実の幸福に導く仏法を正しく伝える教師のように、常に夫を善導し成功に至らしめる賢夫人
4:婦の如し
 時に夫婦喧嘩もするし、仲良くもする。夫と対等の普通の妻
5:婢の如し
 召使のような妻。
 自己主張をせず、何事も黙々と服従する
6:怨家の如し
 夫に恨みを持ち続ける妻
7:奪命の如し
 日々夫を憎み、夫の命を奪ってしまう恐ろしい妻。

俯いて聞いていた玉耶ですが、怨家、奪命の説明になるとギクリとした事でしょう。

「これは紛れもなく、私の事を言っている」
 
釈尊が自分の心中を覗いて話しているのではないか、とさえ思った事でしょう。

やがて嫁いでからの悪事の数々が思い出されます。
請われて嫁したこの家の生活に戸惑いばかりを抱きました。
幼い頃から蝶よ花よと育てられ、家事が何一つできずやろうともせず、それを咎められた事もない。
だから、これまで一度の給仕もしていない。
関心は己の美貌を磨く事ばかり。
機嫌が悪ければ口も開かず、自分の非を認めない。
夫や父長にも平気で牙をむき、不平不満を並べては、心の中で切り刻む。
自堕落で身勝手でした。
誰も表立って責めないが、顰蹙を買っているのは自分でも分かっていました。
弱みを見せまいと、更に意地になり、落ち込み、拗ねて、皆の気分を憂鬱にしている。

そういえば、この一家は皆、釈尊の教えを信奉して、労働に勤しんでいます。
人の喜びを我が喜びとして、幸せそうです。

「自分もあのようになりたい」
という素直な気持ちが、俄かに、湧いてきた事でしょう。

釈尊は、穏やかに続けられました。
「七種の婦人とはこの通りだが、そなたは自分をどれだと思われるかな。
 どのような女性になりたいか」

「怨家と奪命をこね合わせたような女が私でございます」
と思わず言い放った玉耶に、釈尊は優しく問われました。

「それは良い婦人かな」
「いいえ、恐ろしい女です。私ほど悪い女はいませんでした。
こんな私が救われるには、どうしたら良いのでございますか」
 
それから釈尊は、諄々と玉耶に法を説かれました。

心から悔い改めた彼女は、後世、婦人の鑑と称賛されるようになったのですね。