過去二つの記事では、白隠や夢想国師といった高僧の忍耐力の高さが窺われるエピソードを紹介しました。
他方で、忍耐の困難さが窺われる笑い話もあるので、紹介します。

ある和尚が小僧を集めて人生の要諦を説いていました。
「お前達、この世を渡るには堪忍(かんにん)の2字が大切だ。
 この2字を忘れるなよ」

それを聞いた小僧達、口を揃えて異議を唱えました。
「和尚さん、『かんにん』は2字ではありません。4字ではありませんか」

短気な和尚、
「馬鹿者、堪忍とは、こらえしのぶと書いて2字じゃ」
と、怒鳴ると、小僧達、
「和尚さん、『こらえしのぶ』では、また2字増えて6字ではありませんか」

和尚は大変怒って、
「この馬鹿者、こんな事さえ分からんのか!!」
と、いきなり、拳骨を振り上げ、小僧達の頭をポカポカ叩きました。

すると、一人の小僧が立ち上がり、
「堪忍の二字か四字かは しらねども
こらえしのぶぞ
まことなりけり」
と笑ったそうです。

他人には「堪忍が肝要」と教えておきながら、いざ腹が立つとそんな事は全て吹き飛んで癇癪が出る。
他人には言っていても本人が分かっていない。言葉にとらわれてその心を失っている愚かさを誡められている笑い話です。
二字か四字か六字かは本質的な事ではありません。大切なのは腹を立てない事。ちょっとした事で腹を立てていては駄目なのですね。

まあ、この程度の堪忍ができないようではちょっと情けないですが、案外私達も似たような事はよく経験しているのではないでしょうか。

日頃は「堪忍が大切」「堪忍しよう」等と思っていますが、気の許せる相手や立場的に弱い相手等に対しては、ついつい感情に負けてしまいがちです。

まことに、堪忍は難しい事ですね。