昨年、日置桜と山陰東郷の合同呑みきり会に行った時のこと

会場は鳥取県の東郷温泉の国民宿舎


それぞれの蔵のお酒50数種を利き酒した


私好みの「生もと仕込みの純米酒」が多くて

ワクワクしながら利いてまわった


その後は

生酒につきやすい「生ヒネ香」の原因考察のディスカッションがあり

大変参考になった
 
 
「生ヒネ香」とは、一度も火入れしていない生酒につきやすい独特の香りである
 
この香りを好きな人もいれば、
 
私の様に生理的に受け付けない人もいる
 
 
大抵の生酒を零度以上で保存していると
 
2,3日ではっきりと「生ヒネ香」が顔をもたげてくる

この臭いの発生しやすくなる一因が

零度以上での温度管理に起因するだけではなく

米質にもあるんじゃないか?

という考察に思わず唸ってしまったのだ



この「生ヒネ香」は

「イソバレルアルデヒド」や「ポリスルフィド」が原因物質であるので

「つわり香」「甘臭」「漬けもの臭」「焦げ臭」
 
などが複雑にいりまじった香りであり

ナッツのような香ばしさや、甘い香りを伴う

この生ヒネ香がついてしまった生酒は

冷たいときには

この香りがマスキングされて呑むことができても

燗にすると極端に浮き上がってくるので

興ざめしてしまう


この「生ヒネ香」とは別に
 
火入れした清酒が劣化した時の臭いの「老香(ひねか)」も
 
成分的には「生ヒネ香」同様に
 
「イソバレルアルデヒド」や「ポリスルフィド」が起因する
生ヒネ香との相違は、「甘臭」は余り伴わず
 
「漬けもの臭」様の香りが強いかな、と思う
 
 
ただ、これは私の感性であって
 
人によって、この香りをかいで受けるイメージは違うはずだ
 
 
また古酒になると発する香りの「熟成香」もある
 
いわゆる「黒糖」「ナッツ」「醤油」「みそ」などにたとえられる香りで
 
「老酒(ラオチュウ)」などについている香りや
 
梅酒につく香りなどを想像していただければ
 
分かりやすいかもしれない
 
 
 
この「熟成香」を「老香(ひねか)」と勘違いされるかたが多い
 
 
ただ、この二つの香りを完全に分けることも難しい
 
 
感じ方に個人差があるのだが
 
要は、「美味しそうな、旨そうな」香りが「熟成香」であり
 
「生理的に嫌な臭い、不味そうな臭い」を「老香」と分類するしかない
 
 
このなかで「生ヒネ香」は
 
生酒なら、どの酒にもつくかといえば
 
そうでもないのだ
 
「日置桜」や「辨天娘」などの生酒は
 
「生ヒネ香」がつきにくいように感じる
 
また、同じ日置桜の生酒のなかでも
 
「お米の品種の違い」
「お米を生産する農家の違い」
「お米の育つ立地の違い」
 
などの要因により
 
「この農家が栽培した米のお酒は、ほとんど生ヒネ香がつかない」
 
という経験則が蔵元の山根社長にはあるという
 
 
また、「滓(おり)が絡まないお酒」は、「滓が絡んだお酒」よりも
 
生ヒネ香が出やすいんじゃないか?
 
・・・と考察されている酒販店さんもいらした
 
それは私も以前から感じていたことだ
 
詳細な原因はわからないが
 
滓成分(にごり酒の成分のこと)が、生ヒネ香を吸着して
 
生ヒネ香をマスキングする効果があるのかもしれない
 
 
このように「香り」ひとつとっても
 
純米酒は奥が深い
 
これが結論か??(笑)