80歳位の老人夫婦だった。2人で車に乗ってスーパーに買い物に来た。入り口に
到着すると夫が「男に買い物かごを持たせるなんて」と文句を言った。妻は
「うるさいっ!」と激しく怒鳴った。可哀想な2人だった。何を楽しみに生きているの
か、人生で大切なものは何か全く感じさせない2人だった。思いやりがなかった。
安らぎも寛ぎもなかった。不幸を絵に描いたような2人だった。買い物の間、離れ
離れになることはなかったが険悪なムードは終始一貫変わらなかった。潤いが
微塵もない。妻の品物を選ぶ時の引っ掻き回し方など投げやりな態度が目立っ
た。品格の欠片もない。貧しい人生に思えた。偶然スーパーに入る時も出る時も
私とほとんど同じころになった。2人は黒色の真新しい乗用車に乗って言い争い
ながらスーパーを去って行った。そこそこの家に住んでそれなりの暮らしをして
いることだろう。どんなに高価なものに囲まれていても幸せになれるとは限らな
い格好の例であるように思われた。思わず辺りを見回した。仲睦まじく労わり合
っている老人夫婦も何組かいた。救われた。ほっとした。「仲良きことは美しきか
な」・・・もちろんこの夫婦にも救われる道はある。矛盾が激しければ解決しようと
する力も大きくなる。「善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」