池田浩二、グランドチャンピオン優勝おめでとう!2013年の住之江グランプリ以来、およそ8年半ぶり10度目のSG戴冠。松井繁、瓜生正義に次ぐ現役3人目のSG2ケタ優勝者として艇史に名を刻んだ。決まり手こそ“逃げ”という記録にはならなかったが、だからこそ池田自身の冷静さ・手腕・経験が際立ったファイナルバトルだった。

 

 

 
 

 優勝直後、池田本人は「びっくりした」と口にしたが、少なくとも私の目にそうは映らなかった。1周バックにおける上平の驚異的な伸び~2マーク先制アタックに関する話。要するに、スリット裏付近からグングン差し伸びて来た上平の突っ込みに対し、池田は待っての差しを選択したのだ。結果論と言われるかもしれないが、このチョイスが正解であったことは明白であり、Vへと繋がる極めて冷静な判断だったと言い切れる。なにしろ、初動の位置、握り込むタイミング、艇の安定感と返り具合などなど、全てが一遍にマッチした教科書通りの“抜き”だったのだから。

 

 

 
 

 思えば、今節の池田は初戦から手腕の唸るレースが続いていた。初日12Rの5コース戦を皮切りに、2日目の前後半で見せた2マークの逆転劇、4日目には必要条件の3着を最終コーナー逆転で獲りきって、自力で予選トップを手中に収める勝負強さも披露した。44歳という年齢表記がもはや詐称ではないかと疑念を抱くほどの鋭い旋回とスピード感を武器に、予選道中を池田らしい捌きで闊歩してポイントを積み重ねた。それほどのレース巧者が、至極直近の経験と同じような突っ込みに怯むはずがなかったのだ。私を含め、観ていたファンが2マーク手前で感じた緊迫感は、実のところ取り越し苦労に過ぎないものだったと類推できる。

 

 

 
 

 だから、8年半ぶりという事実を受け入れるのに少々時間を要してしまった。調べてみれば、確かに2013年のグランプリを最後にSG優勝の記録はない。信じ難かった。常人離れした技術と経験を備え、輝きと魅力に満ち溢れる艇界のスーパースター・池田浩二が、これほど長きに亘ってSGタイトルから遠ざかっていたとは。瓜池時代とともに子ども期を過ごした私としては、やはり信じられない年月だった。

 

 

 
 

 ーーオーシャンカップに行けますね!

 ーー「そうですね!それ嬉しいです!」

 1か月後の尼崎オーシャンの権利を持ち合わせていなかった池田が、優勝直後のインタビューの中で最も声を弾ませた回答だ。都合により記念戦線から離脱中の池田にとって、オーシャン行きの切符獲得は下手をすればグランプリ当確よりも嬉々としたかもしれない。なぜなら、今年の舞台は大村。一つでも上の順位で参加することが、例年以上に大きな意味を持つからである。尼崎については、かつてSGを制した水面。月並みな表現だが、これで連覇を果たしても何ら不思議ではないとお伝えしておく。

 

 

 
 

 瓜生正義とともに、誰にも真似できない異次元ターンで一時代を築き上げた池田浩二。猛スピードで水面を疾駆する彼の姿は、もはや一つのブランドと言えよう。そして、時代の変遷を経た今も衰えを知ることはない。言わずと知れた”艇界のキングオブコージ”は、今後においても凄味を増し、その手腕に円熟性の付随したキレを纏っていくに違いない。

 

 

(photos:Youta)