ご近所猫ハート君からの聞きがき。
♡ ♡ ♡ ♡ ♡
〝学校のプールの下の集会場〟に行こうと決心して家の裏の向こうの、知らない家の土の庭まで早足で歩いたとき、胸の内側はどきどき していたけれど、うれしかった。
〝集会場〟に行こうと決めた自分が とってもうれしかった。
おとな猫たちが決めた〝土の猫道〟と
猫道としては却下された
〝すべすべタイルの人の道〟
二つの道のわかれるところで、自分は、〝すべすべタイルの人の道〟を選んだ。どきどき しながら。
どきどき していたけれど
〝すべすべタイルの人の道〟をそんなに怖いように思わなかった。
自分は少しだけ人が好きだったから。
それと、この〝すべすべタイルの道〟は新しくってきれいで、自分の道 自分だけの道にしたいなぁ とも・・
胸の内側はどきどき していたけれど、自分だけの道 を見つけてうれしいどきどき も混ざっていた。
〝学校のプールの下の集会場〟への道は、
〝すべすべタイルの道〟にしようと、その時決めた。
自分の道に決めた〝すべすべタイルの道〟を早足で行くと、幸いに人には会わなかった。それで早足のまま、人や自転車の通る〝人の道〟につきあたると、目の前を自転車が通った。犬と人も通った。犬は小さかったけれど自分よりは大きかった。それで思わず後ずさりしたとき、その向こうの広い広い道に自動車が重い音をして通った。犬よりも人よりも、自転車よりも、ずいぶんずいぶん大きくて、怖くて、自分は〝すべすべタイルの道〟に走って戻った。走りながら、〝集会場〟へ いつかは行かれるのだろうかと、胸の内側が不安になった。胸はますますどきどき して、もう自分は〝プールの下の集会場〟へは行かれないかもしれないと思った。犬は大きいし、自転車は速いし、その向こうの広い広い道を通る自動車は、もっともっと大きくて速くて・・ 怖かった。
〝人の道〟と その向こうの〝自動車の道〟をはじめて見たときはこんな感じだったよ。
もうずいぶんずいぶん前のこと・・
中野 新井薬師
ダイニングバー
どもあもく