ご近所猫ハート君からの聞きがき。
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もうずいぶんずいぶん前のこと。
おとな猫たちが〝学校のプールの下の集会場〟への猫道を決めてから少したったころ。
まだまだの子ども猫から少しは大きくなって自分は、遠くへ、特に〝集会場〟に、早く行ってみたいと思うようになった。
『家の裏の向こうには、知らない家の土の庭と、それからずうっと工事中だったところがあって、危険な〝きれいなすべすべの廊下〟に続いていて、その両側に細くて安全な、土の猫道。
猫道を抜ければ、人たちや自転車が通る〝人の道〟。
その 人の道 を越したら、最大級に危険な、自動車の通る広い広い道。でもその危険を渡りさえすれば、学校の植込みの土。植込みの向こうにはフェンス。そのすぐ向こうに、学校のプールの下の集会場は覗けるけれど、フェンスは通れないし登れない。
それで、プールの隣にある物置小屋の屋根に上がって、プールとの隙間に飛び降りる。それでフェンスの隙間に入れば、そこが そこが〝学校のプールの下の集会場〟』
誰から教わるでもなく猫ならみんな、どんなに小さいこども猫でもが共有していて、頭の中か胸の内側かしっぽの先かほかのどこかに自然に持っているもの。おとな猫たちが書きかえれば即新しくなる共有の情報。
〝集会場〟への道順も そんな情報のひとつ。
少しは大きくなった自分は〝学校のプールの下の集会場〟への道順を想い描いて・・
何回も想い描いて・・
想いがいっぱいになったある日
早足で歩いた。
家の裏の向こうの、知らない家の土の庭まで
早足で歩いた。
胸の内側が どきどき した。
もうずいぶんずいぶん前のことだよ。
中野 新井薬師
ダイニングバー
どもあもく