朗読会で梶井基次郎の『檸檬』を読みました。
朗読会をはじめたころから何回も朗んでいます。
朗むときはいつも・・
〝驟雨のように浴びせかける絢爛〟が〝きりきり〟と
朗むものの想いの中へ〝刺し込んで〟きます。
〝レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあの丈の詰った紡錘形の格好も〟
そんな檸檬が朗むものの想いの中空に浮んできます。
〝私は街の上で非常に幸福であった。〟
〝疑いもなくこの重さは総ての善いもの総ての美しいものを重量に換算してきた重さであるとか
・・・何がさて私は幸福だったのだ。〟
梶井基次郎の浴びせかける言葉の絢爛は朗むものを、総ての美しいものの崖っぷちに置きざりにします。
中野 新井薬師
どもあもく