二十歳になった。祝ってくれるものなどいなかった。



十代最後の日も、二十代最初の日もバイトをしていた。僕は自分が誕生日だと明かさなかった。明かしたところで同情はされるだろうけど、もしかしたらプレゼントももらえるかもしれない。でも急場しのぎのプレゼントしか与えられないだろう。なんか…おいしいジュースとか。


いつもとかわらぬ接客と人づきあい。それは大切だ。テンションをさげていると理由を根掘り葉掘り聞かれるかもしれない。失恋したの?二日酔いなの?どれ年上の自分に話して御覧なさい。と言わんばかりに。人間というものは相談されるということを欲する。相談されると気分がいい。確実に上から目線でものを言えるからである。心地いい。人間だれしも王の気質があるとすれば、そういったところなのかもしれない。


帰りに麦酒を買って帰ろう。そう思ってちょっと寄り道をしてディスカウントスーパーに向かい、冷えた麦酒を手に取った。おつまみは…買わない。しょっぱい食べ物で麦酒をごくりとのどに流し込むとおいしいことは知っていたが、しょっぱいものはもう目がしらにたまり始めていた。


あぁこのさきも僕は誰にも祝われず年を取っていくのだな。そう思うとじわっとこみあげる。



レジに向かう。童顔の僕の顔を店員は睨み付ける。僕は目をそらした。二十歳なんだからもっとどうどうとすべきなのに、いざというときには身分証明書を見せつけてやればいいのに、目をそらした。逃げた。自分がもう二十歳だという現実から逃げた。取り戻せない青春の日々、大きな障害もなくただ平坦な道をたどるだけの、平凡でつまらない。思い出は空き缶だけ。


麦酒は買うことができた。帰ろう。家に帰ったら食事が用意してある。もしかしたら何かごちそうが用意してあるかもしれない。食の細い僕の好物が食卓に並んでいるかもしれない。ケーキ。


家に入ると真っ暗であった。こ、これは!心臓がどきどきした。みんな真っ暗な中待ってくれてるんだと思った。違った。自分で電気をつけるとメモが残されていた。


「コンロにカレー作ってあります。自分で温めてたべてください。」


カレーは確かに大好物だった。大好物。カレーと牛乳さえあれば栄養はとれてとりあえず死なないというのが僕の持論ではあるが…。…。コンロの火をつけて、カレー皿に保温していない冷めたご飯を盛る。カレーはそんなに辛くない。大きく切られたニンジンが甘い。肉が少ない。麦酒は苦い。現実は甘くない。眠い。寝る。

春休みは憂鬱だった。



春休みバイト以外やることがなくてとんがっていた。道行く人すべてを傷つけて廻るほどとんがりまくっていた。つんつんしていた。つらく当った人ごめん。これからデレデレモードで行くから。


というのも、この二ヶ月あまりツンツンしすぎてたみたいでその代償が僕の体に異変を起こしているのです。これは天罰、カウンタートラップです。パルボラ星人の成人式に訪れた僕の化身ミハリカルガ3,7世が企業の無事故安全無病息災を願うために用意しておいた樽に入ったポン酒を一気飲みした際に、それ以上の被害を被らないためにパルボラ警察が生爪をはがしました。それが化身である僕の実体にも影響を出し始めて爪の肉がはがれ落ちそうになっております。


覚悟。それは覚悟の表れなのか。


それは忘れもしないあのシーン。頭に焼き付いて離れない。

何でそういう流れでそうしたのか覚えていないが、るろうに剣心の10本なんとかのなんとかさんがボスのななお?に爪をはがしてみせた。それはそれは壮絶であったが幼少のころのきおくなのでさだかではないのだがかくごを感じることができた。


僕はその覚悟を受け継ぐのか、生爪をはぐことによる覚悟は相当のものである。だってこんな一ミリくらいはがれてるだけで激痛に襲われ夜も眠れずこんなパソコンの前に座り、眠気眼をさすってテキストをうっているんだから。なんとかさんはすごいのな、なんとかさんは。



まぁなんか憂鬱なことから話が脱線してるんで元に戻す。


春休みはきっと憂鬱だと予想していた。春休み直前になってそれに気づき、あたふたしていた。もしかしたら僕のほかに同じような理由で憂鬱だと予想している女子はいるんじゃないかと期待を込めながら。まぁいないんだけどさ、そこそこかわいい子はみんな彼氏いるんだよ死ねよ!!!


そんななか、恋には無縁そうな女の子をクラスで発見。で、クラス会もあって食事したんだけど近くの席に座ったりとかしちゃったんだけど、予想以上に無縁そうでさ、恋に無縁な僕より無縁?こっちが話しかけてもなんかそっけないっつーか?なんつーか?興味ない、みたいな?ご機嫌斜め?みたいな?


そうなんです。誰も僕に興味ないんです。世の中誰も僕に注目しない。気にしたって一番気になるんじゃなくて良くて三番手あたり。東西南北でいうと北くらいな扱いがせいぜい。北だってかなりアピってたけど結局振り向かずでしたよね。色目使っても東西以外にはガーターみたいな。苺の話です。ちなみに僕は東西南北では好きな子はいません、同じ予備校の子です。


三番手。三番手にできることと言えばせいぜい相談に乗ってやることくらい。あいつ全然振り向いてくれないんだよね的なことを親身になって聞いてあげられる関係。冷静に聞いているようにも思えるかもしれないけども、そのあいつに対してははらわた煮えたぎるほど嫉妬をしてる。嫉妬深く思慮深い。んなこたないけど、ツモでしか上がらないから勝てない。フリテンじゃなく、相手のことを考えすぎ。



一番憂鬱になったのはしょこたんでした。

しょこたんは池メン俳優と食事をしてフライデーにとられたんですけど、そのことに対してしょこたんはブログで「友人と食事しただけだお!」みたいなことを書いてたけど、その食事の際ブログを更新してなかったっていう…しょこたんはなんでもブログで更新するじゃないですか、うんこしたお!とか快便だったお!だとレベルでさ。なのにそんな友達と食事をするくらい充実したことくらい普通更新するじゃないですか。でもそれをしなかったってことはですよ、世間に知られたくなかったってことじゃないですか。もうね、僕の中で何かが壊れた音がした。パリーンって…しょこたん、ああしょこたん。うちに地デジ対応のテレビが来まして、それで科学くん見ましたよ。ええ、かわいいですよ。なんですかあのくっきり具合は、そこにしょこたんが座っているかのような感覚を覚えましたよ僕。で、しょこたんはSPEEDの誰かさんみたいに地デジ未対応顔じゃなくて、ちゃんと対応してたお!むしろかわいく見えたお!CDも借りた!買う勇気はなかった!そんな僕のまっすぐな気持ちをむげにするかのようなフライデー。いやね、ただの池メン俳優だったら僕は全然よかったですよ。しょこたんの幸せは僕の幸せ、ではないけど祝ってはあげられますよ。でも噂によればその池メン俳優って常にだれかとの交際が絶えないような、そんな軽そうな男じゃありませんか。僕はひとりで焼肉行っちゃう根暗なしょこたんが好きなんですよ。根暗だけどちゃんと花がある。オタク戦線という名の戦場に咲いた一輪の花。矢口なんてクソくらえ。そんなね、僕ら根暗族にも勇気を与えてくれる幸せの黄色いフラワーの横にさ、ハウステンボスに咲いてそうな真っ赤なチューリップが咲いたら台無しじゃないですか!!僕らはただそれを見て「ギギギ・・・」というほかないのですよ!ハンカチを口にくわえながら!


絶望した…絶望した!みんな浮かれる春休みに絶望した!!


近くの公園を通ってもそうですよ。さくらの木の下に群がるリア充ども。キャーキャーギャーギャーうっせえんだよ酒くせえんだよ閑静な住宅街目指してるんだよこの町は。みんなで酒飲んで楽しいですか、酒飲んで無礼講になっちゃって楽しいですか!僕は…僕は、僕以上のリア充を許さない。


滅多なことでは怒らない僕は唯一怒りの沸点が低いこと。それはリア充トークを聞くこと。彼女とどうのこうの言うやつは死ね!ちょっと仲悪くなっちゃったどうしよう…とか相談してくる癖にすぐ次の日に仲直りしてるやつら死ね!


なんで僕だけ、なんで僕だけこんな思いをするのだろう。こんな思いをしてもうすぐ二十歳を迎えなきゃいけないんだろう。捨てなきゃいけないものはくっついて離れない。これは誰かの陰謀・・・パルボラ星人の国家機関から僕が不幸になるように陥れようとする黒幕がいるに違いない。そう思うと道行あいつもこいつもあやしく感じてきた。この日記を読んでるお前も怪しい、グーグルからやってくるお前もヤフーからくるお前もアメーバからくるお前もお前もお前もお前もお前もお前もお前もお前も

僕は下等な生き物でして、毎日独りで童貞を嘆きながらよがる。



そんな僕も今では大学も通う(マイナーだけどね)一般男子。まぁ恋愛経験は一般的に見たらぜんぜん満たしてない感じで?というかむしろ底辺的な??存在だけど、そんなことはさておいてまぁ大学生活をまずまずは楽しんでいるわけですが、どうにも彼女ができない!あいつやこいつ、はたまた眼鏡のこいつにもできたのに僕にはいつまでたっても女は巡ってこない!世界は本当に男女比が50/50なのかどうか神に問い詰めたいね。


別段努力しているわけではないけどさ。あいつはサークル活動に勤しんでるらしいけど、その時間を使って僕は自己発電を勤しんでいる。こいつはケータイサイトを使って親指の恋をがんばってるらしいけど、僕はその時間を使って左手を恋人にしてるわけで。まぁできなくて当然ですわ、なんの努力もせずただ自分の独りよがりな感情に身を任せてエクスタっちゃってるわけだからね。というか臆病でそんなことできるわけありません。そんな子孫繁栄活動するのは恥だと父母に教えられました。嘘だけど。


だからね、絶対合コンとかね、そういうチャラつい

「nebeー、おれたち今から合コンなんだけどさ、今日来るはずのU太が風邪ひいちゃって来れないらしいから人数合わせに来れない?」


「いやいやそんなん行くわけないでしょwおれだよおれww言ったとしても空気冷めさせるだけだしww童貞だし…っていうか今日バイトあるしー、マジ、これマジだからww」


あぁ・・・僕はいつまでこんなチキン野郎を続けてかなければならないんだ。こういうことを積極的に参加する奴にだけ彼女はできるのであって、僕のような恋愛に消極的なずばり草食男子なんて、世じゃ注目の的だけどそれってただ馬鹿にしてるだけだろ…ふざけんな死ねよ…好きでこういう性格してるんじゃねえよ・・・。あーあ、このまま僕はやすっちぃプライドという名の殻にこもったまま大学も4年間過ごしちゃうのかなぁ…


「nebeー行ってきなよ!nebeならうまくいくって!彼女もできるよ。」


R子ちゃんからの助言だった。R子ちゃんはかわいい。とてもかわいい、というより美人なのか?まぁなんでもいい、美しいのであれば。僕もこんな子とキャンパスラブライフを過ごしたかったけど、高校時代から付き合ってる彼氏の存在を知って絶望した去年の夏ごろ。そのころから、「かわいい子ってみんな彼氏いるんだろ…ふざけんな死ねよ…」というネガティブな思考回路を生み出してきたのであったが、まぁもう大学のかわいい子はみんな彼氏いるの法則だよ!どうしたものか!


「そ、そうなのかな。自信ないよ、そういうの行ったことないし・・・おれ口べただしよぉー」


「大丈夫だよ!そりゃ最初nebeに話しかけにくかったけどさ、一度話したら普通だしおもしろいよ。」


や、やっぱり話しかけにくいオーラ出てたかぁー!自覚してたけど!自覚してたけど!それを他人の口から、それもかわいいと思っている子から言われるとなるともうショックで立ち直れないところだけど、話してみると面白いって言われたら元気モリモリだお!(^ω^)


「じゃあ決まりだな!行こうぜ!もう待ち合わせの時間まであんまりないんだよね」


「マジで?どどどどどどどうしよ…やっぱりビビってきておなか痛いよ。ちょっとトイレ…」


「ちょまじかよー、先歩いてるからな。走ってこいよ。」


僕のおなかは神経質だ。ひとたび生活が恋愛モード(誰かを好きになって常にそのことばかり考えてる時の状態)になると、常におなかの痛みと闘うことになり、マゼラン。失恋モード(誰かを好きになって常にそのことばかりを考えてる時のことを思い出すと張り裂けそうになるこの胸、誰か抱きしめて)になるともっともっと腹痛になる。まぁもっと簡単な状況だと、ババ抜きで最後の二人になったときとか、そんなレベルで悩まされるほどの神経質度。毛ほどのストレスも僕には耐えられません。なので常にトイレに行きたがる。そして長い方だとみんなに知られてるので待ってもらうこともありません。むしろ待っててもらいと「早くしなきゃ…」という感情が湧いてくるのでさらに腹痛を促す結果となるのでおすすめしませんし、したくありません肛門がダークホールに持ってかれる。



トイレから出るとR子ちゃんがいた。

僕はうつむき加減のR子ちゃんに背中をそっと押してくれたお礼を言ってその場を去ろうとした。長い方だと知りつつ、まだ僕のことを待っているのかという理由も考えもせずに。


「ありがとね、おかげで決心でき


「だめ、やっぱり行かないで。……。」


そう言うとR子は僕の腕にしがみついた。突然の思いがけない出来事でただただ心臓の鼓動をはやめるばかりで何でこうなっているのか理解のできない僕は何も言うことができない。彼女も何も言わずにただ僕の腕を抱きしめている。


僕を止めようとしている…?なぜ。


「ごめん、さっきはああ言ったけど。やっぱり行かないでほしい。」

彼女は不安げな表情をさせてそう言った。僕は、最初からそう言ってほしかったのか、なんとなく安堵感を覚えるのだった。軽く涙を浮かべて謝る彼女の彼氏には勝てるかどうかわからないけど、僕は僕なりの持ち味でそいつに打ち勝ちたい。そういう気持ちにさせるのであった。


来るのが遅いと心配になったのかさっきの合コンに行く友達が戻ってきてこの状況を遠目から見られて驚かれた。その時は何も言わずに、きた道を戻って行ってくれた。いい友人を持ったものだ、そして後日みっちりしぼられることになるだろうけどな…☆





(゚Д゚)


今日もいつもと変わらぬ一日が始まる。何も変わらず何の凹凸もなく、なめらかな一日。あっという間に再び布団へ潜り込み、独り、嘆き、よがる。