長袖のシャツを着て、長めのジーンズの裾をめくりあげて、さぁ出かけよう。



うちの庭の裏には通称「草ロード」と呼ばれる人が足を踏み入れることがあまり許されていない鬱蒼としたジャングルがある。まぁ言ってしまえば家とその塀を造る際にできたデッドスペースなわけだが、とにかくめちゃくちゃ狭い。普段は猫しか通ることができず、先日おばあちゃんが「草ロードからすずむしの鳴き声が聞こえてきたわ。秋ね。」といとをかしなことをおっしゃっていたので草ロードの草をむしることにした。寝つきが悪くなったらしい。


この草ロードに入るのにも一苦労で部屋の窓から落下せねばならないのです。一階のまどからなのですが、床下がある分余計高く感じられます。それに着地するところがあまりに狭いのでいろんなところを磨って傷つけないよう気をつけながら落下。すると目の前のブロック塀にすげえいかしたヘアスタイルのパンク野郎を見つけた。毛虫だ。


僕は叫んだ。

こんな閑静な住宅街のど真ん中で、僕は叫んだ。僕虫めっちゃこわいねんと叫んだ。


パンク野郎はその風貌とは裏腹に腰をくねらせて踊りを僕に見せつけてきた。僕はその時、しゃぶを打ったあとのクラブで踊り狂うノリピーを思い出した。軍手をつけた左手で地面にたたきつけ、用意していた殺虫剤で文字通りパンク野郎を薬漬けにしてやった。動きがなくなり文字通りヘブンへ召された。


草むしりというのがここまで怖いものだと知らなかった。草の根元を握り、カマを振りおろそうと腰と目線を下した瞬間僕は戦慄した。そこはパンク野郎のコロニーであった。黒髪なのにツンツンと髪を逆立たせて、僕に向かってメンチを切ってきやがる。そして僕が一歩踏み出すと彼らは腰をくねりだした。僕は持っていたカマで真っ二つにしてやった。べジータはいなかったらしい。


僕は今日無数の虫たちと戦いを繰り広げた。毛虫にアリ、バッタに鈴虫、コオロギなどなど・・・ミミズとは釣り餌和平条約を結んでいたため遠くに逃がしてやった。皆殺しもいいところだった。彼らとエンカウントするたびに絶叫をあげていたことは内緒である。


すべての仕事を終えシャワーに向かう。泥だらけになったジーンズのめくりあげたところに毛虫が潜んでいたが僕はもう冷静に対処できるようになっていた。彼らをすべて生かしていたら、どれほどの蛾をこの世に生まれさせていたことだろうか…そう思うと僕は英雄気取りでどこか誇らしげであった。やはりシャワーを入る前にのどのかわきを潤そうと思い、冷蔵庫を開けようとした瞬間黒い影が見えた。連邦国軍のGであった。ゲリラ攻撃にあった僕は叫んだ。僕虫めっちゃこわいねんと叫んだ。