夏休み明け最初に友人にかけた言葉は「おい。早く金返せ。」でした。



これだけ聞くと僕はどんだけ金にがめついやつなんだと思われると思います。いや思われても仕方ないと思いますが、その友人には夏休み前、否初夏のころに1万8千円も貸してしまったのです。「あぁおれすぐバイトやろうと思ってるからまぁ割とすぐ返せると思うよ。」そう彼は言っていたので僕はそれを信用してしまったのです。


僕の通学時間は長い方なのですが、彼の方がさらに長かったので前期中にバイトは見つけられなかったのです。その時彼は正直に僕にその事情を話してくれまして、確かにすでにバイトをしているならまだしも見つけるとなると難しいかなって思ったのと、変に言い訳もせずに素直に話してくれたということで夏休み明け返してもらうことを約束し、前期は終了したのでした。


夏休みなんだし、バイトくらいしてくれているだろう。今頃せっせと働いているかな。



そして夏休み明け、後期が始まり史上まれに見る金欠が僕を襲った。夏休み中バイトばかりしていたものの、給料はいまだ入らず、金を使いすぎたこの夏を後悔していたのでした。あとクレジットカードなるものを持っているのですが、あれは魔法のカードではありませんでした。


この状況を打破するには夏休み前に彼に貸した金を回収するほかない!1万8千円もあれば給料が入るまでは持つ…どころかホクホク顔で給料日を迎えることができるぞ★と思い、一括で返してもらうよう直談判しに彼の面前に。


「おい。早く金返せ。」

「帰りな。」


金を返そうなんて気がさらさら感じられない口調で僕に話してくる。どうやら夏休み中はずっと遊びほおけていてバイトなんてしていなかったらしい。無性に腹が立ったが、何か自分に違和感を感じるのであった。これ以上は彼を責められないような、そんな変な違和感に。


金を貸したのは確かだ。最近は滅多に通帳に記帳はしない僕なんだけれども、給料が入るとうれしくて思わず記帳だけ銀行にしに行っていた時期と貸した時期はかぶっており、通帳にも1万8千円とちゃんと刻まれている。だからと言って返してもらった覚えもないし、返してもらってないからこそ夏休み前の誠意ある謝罪と夏休み明けの開き直りっぷりが見られるわけだし、何に違和感を持つかわからなかった。


とりあえず彼に大金を貸しているのは事実だし、ここできつく言っておかないと本当に返してもらえなくなるかもしれないと思いとりあえず攻め立てた。


「金にわくウジ虫かてめーは。」

「そんなんで世の中まかり通ると思ってるのか。」

「どんだけ夏休み苦労して過ごしたと思う。」

「あぁ…大学1年の夏休みさようなら。」


性格悪いな自分と思いつつも、心を痛めながらも彼を攻め立てる。だんだんと返す言葉もなくなってきた彼を見るとなんだかせいせいしてくる自分がとてもいやだった。他の人にも僕が大金を貸しているという事実をわからせてやる。


「ねぇそう思わないKさん。こいつ夏休み明けても金返してくれないんだ。」


近くに座っていたKさんに話を振る。ちょっとやめてとあわてる友人。僕はそれを見てほくそ笑む。しかしここでうすうす感じていた違和感が最高潮に。そしてKさんが口開く。


「別に思わないし、そういう人他にもいるんじゃない。」


あれ?なんでそんな冷めたコメントを?いやいや僕はこの一連の発言はさすがにおふざけですからね!別にいじめてるとかそういうのじゃないし、いじめるとか僕の性格上できないのみなさんわかるでしょ?っていうかまぁ夏休みつらかったのには変わらないが、そんなに怒ってないからこそこれだけ言うんだよ。本当に呆れているなら口も利かないと思うし、利いても今のKさんみたいに冷めた口調で…


ハッ

ぼっ、僕はなんて・・・!

僕はなんて愚かな・・・!

違和感は無意識な僕の・・・!



前期のある日。売店にいた僕は食べ物と飲み物を購入しようと思ってレジに並んでいた。レジ打ちを終え金額を確認し財布から小銭を出そうと思ったものの財布には万札しかなかった。万札はここではくずしたくないな・・と思った僕はそれらを買うのを諦めようと思ったその時だった。後ろに並んでいたKさんが自分の商品も一緒に出して、会計を一緒にすることによって僕の窮地を救ってくれたのだった。「金くずしたらすぐ返すね!」そう言って僕は彼女に借金をすることになったのだった。そのお金を、数百円でしかないけれども確実に!僕は彼女からお金を借りている身であった。


あふれ出る冷や汗を止めることができなかった。自分の財布から小銭を出してKさんにすっと渡した。彼女はなにも言わず、流れ作業のように自分の財布の中にそれをしまった。