満員バスに乗った。



それはそれは満員も満員。ぎっしりクリームのつまった薄皮ピーナツパン(5個入り)くらい詰まってた。二次元的には。僕はたまたま空いていたときに乗り込んでいたので、その後混むことを予想して五人掛けの一番後ろの席左から二番目に座る。奥へと詰めていくのが都会のマナー。


バスが発車する。大きな駅の近くのバス停なので、空いている席はほとんどなかった。バスが進み、停留所に止まるたびに乗客が増えていく。あっという間に席は埋まり、立っている人の方が多くなっていた。ただ、僕の右隣の席、つまりは五人掛けの一番後ろの席の真ん中の席一人分だけは空いていた。空いているのにもかかわらず立っている人たちは誰も座ろうとしない。その席の目の前に立っている女は座ろうか迷っているのか、その真ん中のシートをじっと見つめ、やはり座らないと決めたのか吊革につかまったまま再び視線を窓の外へそらした。混みゆく車道。外を歩く人間の方がバスより早いという苛立ち。


それでもバスは徐々に進み、次の停留所へ着いたときまたどっと乗り込もうとする客が増えた。バスのドライバーが立っている乗客に注意する。

「すいません、もうちょっと奥へ詰めていただけますかー。」


バスの前の方にいた乗客は詰められるか確認するために視線を後ろに向ける。一番後ろで立っている女の方へとその視線が集中する。それに気づいたのか女、ちょっとこわばった顔をする。座ろうか座らないか、もう一度その真ん中のシートへ視線を送る。しかし頑としてその吊革から手を放そうとしない。確かに、この真ん中のシートはきまずい。なんか挟まれていて。それにちょっと危ない。急ブレーキをかけたとき、捕まるところがないからだ。だから小学校の遠足でバスを利用するときなど、先生はその席に座ってはいけないと注意をする。しかし今はどうだ?こんな道が混んでて人の歩くのより遅いスピードで走っているのに急ブレーキもくそもない。それに奥に詰めてないおかげでバスに乗れてない人もいる。それを考えてあなたはここに座るべきだ。


さぁ、座ろう。ね。


…座ろっか。


…座っちゃおうぜ。


…座っちゃえよー


…座っちゃいなよ~


…座んないの?


…座ろってば。


…座れよ。


…座れって。


…座れ


座れって言ってんだろォォッォォォォォッ!あ!?


そんなにあれか。この人ごみで室温、いやバス温が熱くなってきたおかげでにじみ出てきた僕の脇汁。そこからそんなに臭いがするか。そんなに僕が臭いか。隣に座るくらいだったらこのバスに乗ってる乗客全員を敵に回してもいいくらい臭いのか。おい。聞こえてるのか。それともそんなにきまずいか。僕の隣じゃそんなに居心地悪いか。ここで座らないから逆に僕の方がきまずいわ。傷ついたわ。もうやっていけない。もう死にたい…死んだらその分席あくもんね…(仏)