「ハイ。」

扉の向こう側から彼女の細い声が聞こえる。寝起きなんだろうか。

ガチャ「ハイ。」
「よっ」
「うっ」

ガチャン。

扉を閉められた。意味がわからなかった。閉められる意味。別に喧嘩とかもしてるわけでもなかったし、今日なんてそんなに出かけるわけでもないのに朝からハイテンションだったので、自分の勝負服で来たわけだし、追い出された意味がわからなかった。

「オイ、開けてくれよ。美咲。」

僕は叫んだ。しずかな住宅街に響き渡る僕の声。道路から感じる冷たい視線。早いところこの部屋に入ってこの空気から抜け出したいと思った。

「帰って!」

震える声で彼女は扉越しに僕に言った。泣いていた。ボロボロと涙を流しているんだろうか。わからない。わからなかった。彼女が泣いている理由。このまま彼女を泣かせたままここの空気を耐えるのには大変なストレスが、と思った僕は名残惜しくも彼女のアパートから帰路についた。

家に帰り、考えた。でも、わからなかった。唯一考えられる理由はやっぱり性行為に対して未だに恐怖心を抱いているんじゃないかと、でもそれでは半年と置いた意味がない・・・迷宮入りしていく彼女の気持ち。

きっと僕が悪いんだ。謝ろうと、携帯を手に取ろうと思いポケットの中を探すが故障中で携帯ショップに預けていることを思いだし、あきらめた。

「もう彼女と会わないほうがいい・・・。」

そう思い、彼女と一緒だった仕事先をやめて新しい出会いを求めようと違う職場を探している僕。何が悪かったのだろう、数ヶ月たった今も時々考えるけど結局何もわからないまま時間が過ぎていくので、忘れることにした。










息、大丈夫?