恋する相手が紙の中の人に変わったのは、小学校の頃だったと思う・・・


私の名前は土橋望美。中学2年で14才。恋愛至上主義の姉二人をかかえている私だけど、その遺伝子は私まで残っていたわけではなかったみたいで、特に好きな人というのができなかった。

小学校低学年のときは、幼いながらも普通に男の子を好きにもなっていたし、間近に迫っているバレンタインデーでは普通にチョコレートをあげたりもしていた。本命チョコを作ってあいつに渡していたときまでは・・・

小学校3年の時のバレンタイン。私はR君を、いつも影から見守りながら恋をしていた。友達にも相談して、ちょうどバレンタインがあるんだし、そのときに本命チョコをあげちゃえ、みたいな話になった。今回だけは本気を出して、慣れない手つきでお母さんの指導の下、板チョコを溶かして型にハメてハートマークのチョコレートを作った。コレで恋に勝てる!まだ姉二人もなしえてないことだけど!と思ってちょっとした優越感に浸っていた。

当日。私は朝一番にR君の机の中に自分の気持ちをつづった手紙の入ったそのチョコレートを入れておいた。そして学校から登校し、机に教科書を入れようとしていたR君はそれに気づく。私はドキドキしながら教室の扉越しにその様子を見てみる。とりあえず・・・恥ずかしいからランドセルか何かに入れてください!

と願ったのもつかの間、R君はせっかく時間をかけて包装したそれをビリビリに破き、中からチョコレートと手紙を取り出した。そして手紙を手にとってその場で大きな声で読み上げた。

「『私はR君のことが好きです!このチョコレート食べてください。土橋望美より』だってよぉぉー。何コレラブレター?そして破れたー。」

手紙を破くR君。なんとことを・・・!と思ってこぶしを握った。

「あんなメガネの作ったチョコなんかいるかボケェ!」

チョコレートはゴミ箱に見事な放物線を描いてシュートされた。目の悪かった私はひどい度の入ったメガネをしていたけど、こんなひどいことを言われたのははじめてだった。その日一日中、メガネは曇っていた・・・それ以来、私は男の子のことを信じられなくなった。


次の年からはチョコレートなんかを作ることをやめて、よくマンガなどを読むようになった。マンガの中の男の子はみんな純粋だ。そして悪者であっても自分が傷つくことはない。そう思うと、最初は少女漫画だけしか読んでなかった私は物足りなさを感じるようになって、少年漫画も読むようになった。

そして小学5年生の頃、私はシャーマンキングの麻倉葉に恋をした。そのまったりとした性格で、私を何度も癒してくれた。


それから中学に入った私というと、絵ばかりを描くようになった。いつしか小学校の頃の友達とは距離を置かれるようになって、教室で一人、机に向かっているようになった。学校には友達がいない。だからマンガも持ってきていた。何度も先生に取られそうになったこともあった。クラスメートはその姿を見て指差して笑っていた。私だけなんだかそのクラスで浮いていた。

友達なんて必要なかった。このマンガと、絵を描ければ何も寂しいことなんてなかった。友達との友情のしるしみたいなものも、絵の中で私に語ってくれる。私の描いた絵は嘘をつかない。なぜならそれは私自身だったから。


私は休み時間を使って絵を描いていた。周りの生徒は特に私を気にすることなく過ごしている。最初のうちは、何絵なんか描いてるの?気持ち悪・・・という目をしてきた男子も多かった。しかし今では私は空気だ。そこで何をしていようがかまわない、というような態度というか、オーラのようなものを放っていた。でも私にとってはそれはやりやすいので、特に改善することもなく毎日を過ごしていた。その日もそのはずだった。

「ねぇねぇ、それアレンだよね?」

家族と絵以外に話してくる人なんて久しくいなかったから最初は誰に向かってしゃべってるのかわからなかった。とりあえずシカトしたら、肩をポンポンとやられた。どうやら私に話しかけているらしい。

「ねぇ、聞いてる?ディーグレって面白いよね。」

「あ、う、うん。」

変声期の途中の声で話しかけてくれたのは相川駿二君。男子と話をしたのが本当に久しぶりだったから、なんとなく顔を赤らめてしまった。それを気づかれないように、再びうつむいて絵のほうに向く。でも相川君は空いていた隣の席に座って話を続けた。どうやらディーグレイマンが好きで、全巻持っていて、さらにノベルズも持っているんだとか。ディーグレなんか腐女子しか読まないものだと思っていたけど、そうでもなかったようで、最初はうつむいたまま相槌だけ打っていただけだったけど、だんだんとその魅力を語っていくようになった。

相川君はマンガが好きらしい。

私の持っているマンガのほとんどは持っているみたいだ。ついでに同人誌も買っているとか。まるでオタクだ。中学でオタクなんていうと、なんだか根暗で教室のすみっこでガンダムの話で花を咲かせているようなイメージを持つ人がいると思うが、彼は違った。運動も出来れば勉強も出来る、さらに顔もなかなかのイケメンだと私は思う。友達もいっぱいいる。趣味は似ているのに、ココまで人間は違ってくるのだと私は思った。

話を交わすたびに、私はどんどん相川君の魅力に気づいていく。紙の中の男の子にしか恋心をもてなかったはずなのに・・・。それだけ相川君はいい人だった。というのと同時に、相川君は私のことが好きなんじゃないかという気持ちも沸いてきた。モテない男の子がちょっとかわいい女の子に話しかけられるだけで、自分のこと好きなんじゃね?とか勘違いをおこすことが多いらしいが、私もきっとそうなんだろう・・・

つづくッ!