大きな背中に、真っ白なツルツルのエナメルバッグ。


小学校6年生のとき。最高学年の6年生では、新入生の1年生の面倒を見るという役目をさせられていたのです。僕が1年生のころも6年生に甘えてばかりで自分のことが自分でやってないなんてことは何度もありました。しかも泣き虫で。多分6年生の人は「うわーめんどくさこのガキ」とか思っていたんでしょうね。そんな先輩たちもいまごろはどこかの会社に就職とかしているのかなぁ・・・とか思うと時の流れの速さを感じずにはいられません。

僕らが6年生の頃にも、とても手のかかる1年生がいたのです。そいつの名前はたけし。最近のまるでヤンキーとかが適当につけてるんじゃないかと思うような名前ではなく、昔ながらのいい名前だなと純粋に思っていました。しかしそんな名前とは裏腹にとっても手のかかるやつで、トイレに行くにも勉強机に戻るにも何かとトラブルを起こすやつで、クラスのみんなの悩みの種だった。そんなたけしを、帰る方向とか同じだからという理由でみんなに押し付けられたことを僕は忘れはしない。


そんなこんなで学校も一緒に帰ることとなりました。最初のうちは一人一人に自分の帰り道を覚えてもらうために先生引率のもと、集団下校をしていたのですが入学して一ヶ月くらい。つまりいまごろの季節になると、一人一人で帰ることとなっていったのです。しかしまだ6、7歳ということなので一人で帰らせるのは危ないので6年生である僕たちが一緒に手をつないで帰っていたのです。たけしは恥ずかしがる様子もなく人前で鼻くそをほじる癖があったのです。鼻くそのついた手を嫌々握り締めて、一緒に帰っていたのです。

ある日のことでした。いつものようにたけしの教室まで僕が迎えに行くとそこでたけしは地団太を踏みながら泣き喚いていました。

「ポケモンごっこがしたいー!ポケモン!ポケモンごっこ!」

ポケモンなんて全盛期は僕が低学年の頃だったのに、まだまだ流行っているもんだなぁ・・・とか思いながらたけしを泣き止ませようと一生懸命努力をしました。しかしなかなか泣き止んでくれず、おもわず僕の口からはこんな言葉が出てしまったのです。

「わかった!今度一緒にしてあげるから!ね!今度今度!」

そういうとたけしはやっと泣き止みました。指きりげんまんをしてまた鼻くそのへばりついた手を握り締めて家路についたのです。


そしてとうとうその約束は守ることができずに僕は小学校を卒業。そして中学も卒業。そして現在高校3年生。僕はいつものように自転車で帰り道を走っていると、いつもの家の近くの道で一人の白いジャージ姿で大きな背中をした白いツルツルのエナメルバッグを持った人を見かけたのです。どんだけ白好きなんだよ。よごれが目立つんだろうな・・・と思ってしばらく見つめていると僕の気配に気づいたのか、その人は振り返ってきました。やべっ気まずっ、とは思いながらも顔をチラッと見てみるとそれは間違いなく、いつも手を焼いていたたけしだったのです。めちゃくちゃチビだったたけしがこんなに大きくなっているとは思わなかったのでとても驚きました。彼も僕のことに気づいたようなので、僕は左手を口に当ててこう言いました。

「いつでもポケモンごっこしてあげるぞー!」

そういうと昔の子供の頃のような声と大人の声が混じったような、変声期途中の声で

「はい!よろしくです!」

と言ってくれた。約束覚えていたのはどうやら僕だけではなかったようだ。そこから家まではそんなに距離はなかったけどなんだかとても気分がよかったので足が悲鳴をあげるくらい飛ばしてみた。そして足を広げて、今日みたいに天気がよくて暑かったあの日の思い出に浸っていたのです・・・