社交ダンスの競技10種目の中で「異端児」と言えば皆さんはどれを思い浮かべるでしょうか?

 

私は「ジャイブ」だと思っています。

 

ジャイブは社交ダンス10種目の中で唯一のアメリカ生まれ。ご存じの通りアメリカは「自由」と「平等」を標榜する国。そのためか、ジャイブには「自由」な雰囲気が漂うように感じます。

 

社交ダンスにはドレスアップや正装が似合うのでしょうが、ジャイブだけはジーンズにTシャツで踊ってもサマになると思いますし、むしろそんな軽装がある意味ではジャイブの「正解」なのでは、とすら思います。

 

最初にジャイブのフリックを習った時、先生が「まずは蹴ってみましょう」と言いながら、なぜか私の手を取りました。フリックを蹴った後、先生が、「これなら大丈夫そうですね。」と言うのです。別にフリックは組んで踊らなくてもできるので、不思議に思って先生になぜそうするのかを尋ねてみました。

 

「そうしていないと後ろにひっくり返る人がいらっしゃるので…」

 

私はそれを聞いて後ろにひっくり返りそうになりました。先生っ!そういうことは最初に言ってください!出だしはそんなこともありましたが…

 

フリックが蹴れて、シャッセ、スイブル、ロンデなど、ジャイブの音楽に合わせて一通りできることを確認したら、先生が一言

 

「ジャイブに関しては、あとは好きなように、自由に踊ってください」

 

なんと!

 

今までこれでもか!というくらい箸の上げ下げに至るまで注意をされてきたのに(習い事は本来そうあるべきなのでしょうけど)、その意外な一言に驚くとともに、なんだかとても嬉しくなりました。

 

バッハやベートーベンの世界から、一気に尾崎豊の世界へ!

 

ジャイブはもともと一番好きなダンスで一番やりたかったダンスでしたが、先生のその一言でますます好きになりました。

 

本来ダンスとは、音楽に乗ってただひたすら楽しくノリノリで体を動かすことだと思っていますが、ジャイブに関しては特にそういう類のダンスなのではないかと勝手に思っています。

 

社交ダンスを始めてからというもの、細々と先生に注意されることばかりで、社交ダンスのレッスンって、さだまさしの「関白宣言」の世界みたいだなーなんて思っていましたが...。

 

本能のまま、上手か下手は気にしないで、ただひたすら楽しく踊る種目が一つくらいはあってもいいのではないでしょうか。

 

これも個人的に思うことなのですが...。

 

ジャイブが苦手と言う方が多いのですが、時には、「正しく」踊ろうとしすぎないことも大切なように思います。とかく社交ダンスは、正しいか、正しくないかをいつも言われ続けるので、少し考えすぎてしまう場合もあるような気がします。動きがどうであれ、時には音楽に楽しく乗れているかどうかのほうが大切な場合もあるのではないでしょうか。

 

所詮、ダンスは「道楽」なのですから。

 

なので、いきなりシャッセとかフリックとかではなくて、ジャイブの早い音楽に対して、どのような動きでもいいから、自由に身体を動かして楽しく「乗っかってみる」ことから始めるのがいいのかな、とも思うのです。

 

例えば、足首動かすだけで小さく身体を上下するとか、頭だけ動かすとか、身体を揺らしてみるとか、シンプルに手を叩くとか。どんな(他人からみたら変な?)動きであってもとにかく体を動かして音楽に「乗ってみる」ことによって、黙って音楽を聴くよりも楽しく聞けた、気持ちが高ぶった、大好きな音楽がもっと好きになった、というところがスタートなのではないかなーと思ったりもします。所詮ダンスはそれらの発展形なのですから。

 

誤解を恐れずに言えば…。

 

私は、趣味としてのダンスに正しいも正しくないも無いのではないか、と思います。敢えてダンスに正しさを求めるのであれば、それは「楽しさ」ではないかと。

 

ダンスがあってそれに合った音楽があるのではなく、音楽があるからダンスがあるのではないか、ともあらためて思うのです。

 

音楽とは、「音」を「楽しむ」もの。

 

ダンスとは、素敵な音楽をさらに楽しむための「スパイス」なのではないでしょうか。