競技人口がそれほど多くはないのに、世界トップレベルの選手が次々に現れるのが今の日本のフィギュアスケート界ではないでしょうか。社交ダンスとは共通点が多いような気がしますし、社交ダンスでも日本はトップレベルにあってもおかしくはないのではないか、と素人は勝手に思ってしまいます。

 

 ちなみに、ですがフィギュアスケートにおいては、才能ある選手の発掘のための合宿等が行われているようで、羽生選手もそこで小学生時代に才能を見出されたようです。羽生選手はスケートの技術的には特に目立った選手では無く、むしろジャンプでは転んでばかりいたそうですが…。

 

 しかし、その「音楽性」が際だっていて、陸上でのダンスレッスンでは、音楽に合わせて踊れるリズム感に天性のものが感じられたとか。すなわち、羽生選手はアスリートとしてだけではなく、アーティストとしての音楽性の才能も持ち合わせていたわけです。それが、「スポーツと芸術の融合」と言われるフィギュアスケートという独特の世界で開花したわけですね。成人後の羽生選手の長い手足、小さな顔、美しい体のライン。これらもまた、芸術性が求められるフィギュアスケートの世界で大きな武器になっていったのは皆さまご承知の通り。

 

 羽生選手は何種類ものヘッドフォンを使い分けるほど「耳」が良く、試合の時はその時の気分にあったヘッドフォンでその時の気分にあった音楽を聴くのが集中を高める一つの方法であったとか。試合で使われる音楽の編曲にも携わって自分のタイミングで演技できるように拍数を調整していたと聞きます。また、音楽担当の方が、普通の人には聞き取れない微弱なノイズの除去を依頼され、驚いたという逸話も。

 

 羽生選手があれだけの一流の選手になったのは、その一流の運動能力もさることながら、天性の音楽性や様々な感性に秀でていたことも理由なんでしょうね。

 

 社交ダンスに限らずですが、良いダンサーになるためには、良い音楽性が必須だと言われますが、その音楽性とは後天的に獲得できるものなのでしょうか?

 

 音楽性はダンススクールでは教えられない(=先天的にほぼ決まる)、と断言した先生もいらっしゃいましたが、そんなことを言ってしまうと身も蓋もないので、ある程度は鍛えることができるものだと信じたいですが…。

 

 少なくともリズム感はある程度なら鍛えられるようです。いろんなジャンルの音楽をよく聞くこと、打楽器系の楽器(ドラム、太鼓、カスタネットなど)をやるのも良いようです。音楽を聴きながら(エア)ドラム、自分でリズムを刻んでみる練習なんかもいいようです。音楽が鳴り出したら、体のどこかでリズムをとってみる。何も言われなくても勝手にそんなことやりだす人もいますが...。

 

 羽生選手は、聞こえている世界、見えている世界が我々とは違っていたのでしょうね。しかし、厳密なことを言えば、見えている世界、聞こえている世界は、十人十色、それぞれがその人の「オリジナル」なはずです。

 

 その優劣を言う前に、自分と異なる音楽性や世界観を理解することなくしては、良いもの、楽しいものにならない。むしろ自分との共通点や共鳴するところを探すことが求められる。

 

 それがペアダンスたる社交ダンスの難しいところであると共に素晴らしいところかもしれませんね。

 

 それは、人生の多くの局面でも必要な素養のような気がします。