このところたくさん本を読んでいるのだが、

さしあたり、その感想なぞを書いておこう。

自分用の覚書にもなるし、このブログを読んだ人がひょっとしたら

自分も読んでみたいなと思うかもしれないからな。




さて、今回感想を書くのはこの本。

光媒の花/道尾 秀介
¥1,470
Amazon.co.jp


この本は3月26日に出版されたもの。

道尾秀介の最新刊である。


これは、

「隠れ鬼」
「虫送り」
「冬の蝶」
「春の蝶」
「風媒花」
「遠い光」

の6つの短編による連作集であり、前作の登場人物の一人が次の主役になると

いった手法で書かれている。

ところで最初に言っておくが、前半3つの短編は本当に救いがたい。

読み進めていく度に胸が締め付けられる。



もっというと、「性的なるもの」による黒さを書いていて、ある意味道尾作品らしい

胸糞悪さを感じる。

人間の闇を見せるために性犯罪をプロットに取り入れる彼のやり方は、人間の根源

的な嫌悪感を掻き立てるという点においては成功しているが、いくらフィクションとは

いえ辛すぎる。

はっきり言って、こういう小説は自分は嫌いだ。





が、後半3篇は「救い」がテーマであり、前半3篇を我慢強く読んだ者には

ちゃんと救いを用意してくれている。



詳細はネタバレになるので書かないが、この救いがなければ自分のこの本の評価は

最低最悪となったであろう(というか、最後になんらかの救いがあるから道尾作品を

自分は読めるのだ)。



この「救い」に至るまでの物語作りは、さすがにミステリー作家である。

なるほど、こう繋がっていくのかとうならされる。




もちろん、すべてはハッピーエンドではない。

依然として立ちはだかる人生は厳しく、過酷な人の道は描かれるが、

いくら小さくても、「希望」さえあれば、人はまだ生きられる。

生きる力を保つことができる。

立ち向かっていける。





全ての短編の主人公にその後与えられる「救い」は、ある意味では安直で

とってつけたようなものに見えるかもしれない。

それでも、この世を生きていたい人には、そのような小さな「救い」でも、

嬉しくて、優しくて、涙あふれる物語を見せてくれる、そうした作品であった。




一番最後のページの4行。白く眩しい光に包まれた主人公の描写。



僕の好きな伊坂幸太郎の「死神の精度」のラスト

(「眩しいのと、嬉しいのと。似てるかも」との老女の言葉)

に似た読後感を味わった。




<おまけ>

この春放送されるフジテレビ系列の月9「月の恋人」(5/10スタート)。

道尾のブログ「あらびき双生児」によると、どうやらこの原作は道尾の

書き下ろしらしい。

ドラマはともかく、原作の発売は5/31に発売らしいですよ。

あ~あ、またマルサン書店仲見世本店レジ前にて迷ったあげく、

結局買っちゃうのだろうなぁ。

また書物係数が高くなってしまう~。



誰か、本の値段を気にすることなく本を買えるくらい、自分の給料を上げてくれい!