昨日と今日はずーと家の中にいた。


一歩も外に出ない、「巣篭もり」の週末だった。



金曜夜の一人宴会のせいなのか(パソコンの前で「のっぽパンの話」をカタカタ打ったり、
ブログへの動画の貼り付け方をネットで調べながら、ビールと電気ブランを飲みつつ
ウイスキーボンボンを口へ運んでいた)、昨日の午前中はひたすら惰眠をむさぼり、昼過ぎに
少し部屋を片付けたあと、今週末は積み貯めた本と撮り貯めたビデオ(HDDレコーダー)に
手をつけることに決めた。


ということで、今日は、昨日今日読んだ本の中で一番良かったものをレビューする。
Story Seller (新潮文庫)
¥860
Amazon.co.jp

この本は、伊坂幸太郎をはじめとする7人の作品が収められたアンソロジー中編集である。

昨年4月に小説新潮別冊(単行本サイズのソフトカバー)として発売されたとき、
伊坂と本多孝好の小説読みたさに、発見後すかさず買ったものであるが、この2人の小説を
読んだ後、実は、他の作家の作品には手付かずのまま本棚にしまっていた。
(今思えばもったいないことをした・・・)


だが、一昨日(のっぽパンの後立ち寄った)マルサン書店で文庫本サイズになって
平済みされているのを見て、すかさずその文庫本サイズを買ってしまったのだ。

ちなみに、自分は普段、伊坂の本はなるべく単行本と文庫本の両方を買っておくように
していて、暇のあるときに読み比べている。
伊坂は単行本から文庫本にする時、「多少」というか、「だいぶ」手を加え修正するからだ。
(それにしても、『オーデュボンの祈り』だけは単行本が手に入らない。すごく欲しい。)



ところで・・・。
この一年たらずのなかで、僕は伊坂や本多の他にも、有川浩や道尾秀介の面白さも
知ってしまった。
なので、改めて今日、頭の伊坂から終わりの本多まで7人の作家全ての作品を一気に読んだ。


前置きが長くなったが、
結論から言えばこの本はすばらしく面白い。

この本の冒頭に、編集者の一言がある。
「この本は一人の担当者の独断と偏愛により編集されたものである。個人の趣味が色濃く
反映されたあるカラーが出ているため、7人の執筆者中、2、3人の好きな作家がいれば
どの作品も楽しんでいただける
に違いない」とのこと。

そして、この本はまさにそのとおり面白く、いろんな人におススメしたくなる本だ。

以下レビューとする(もちろんネタバレは無しを心がけるので安心して読んで欲しい)。



『首折り男の周辺』伊坂幸太郎

伊坂にしては、の中途半端な感じ。
時間軸の切り替えを使った彼らしいパズルだったし上手いのだけど、あまり「中身」がなかった
気がする。もちろん面白かったし、つまらないわけではないけれど。
ファンとしてはちともの足りない感じ。というか、「彼はこれくらいは書ける」とかって、高いハードルを
設定していまっているからかも。
すみません。伊坂作品の中では、悪い部類かな。相対的にも、この本の中では他の作家陣に
埋もれてしまっている感じ。
ああ、でも伊坂初読の人にはいいかもしれない。

『プロトンの中の孤独』近藤史恵

「サクリファイス」という、名前だけは聞いたことのある小説の外伝らしい。
読んだことがないからあまり「良さ」を感じなかったけれど、テンポの良い文体は
僕にあっている気がする。「サクリファイス」、読んでから読めば良かったのかな。


『ストーリーセラー』有川浩

やばい。有川浩って、かなり良いかも。
こないだ「図書館戦争」シリーズを買って、まだ手を付けてないんだけど、この人すごい。
これだけ文章で、言葉で、引っ張れる人ってなかなかいない。
本好きな人にはたまらない一作だと思います。
ネットのレビューでは「泣ける」という声が多数あり、この本の中では一番の人気みたい。
純愛モノで病気モノ。このプロットはさんざん使い古されたものだし、自分も必ずしも
「泣ける話=いい小説」ではないと思っているけれど、会話の軽妙さや物語の展開の読めなさが
印象的でベタさを感じさせず。
素直に綺麗に泣けたし、この本の中では一番印象深かったです。

『玉野五十鈴の誉れ』米澤穂信

昭和初期の香りがする話。作者曰く、横溝正史にインスパイアされたそうで。
確かにそんな感じがする。ホラーミステリーて感じ。
たぶん、「あの人」が死ぬんだなぁと思ってはいたけれど、なるほどそうか、
そういうことだったのか。
好き嫌いが分かれる話だと思うけど、僕はかなりアリだなと思いました。
「戦慄」。そういう言葉が似合います。

『333のテッペン』佐藤友哉

読み終わり、まず思い浮かんだのは、乙一の『GOTH』だ。
主人公の過去が「あっちの世界の人間」だったことをほのめかしていたり、ユーモアのある文体
だったりに黒い乙一を感じながら、小説としての着地の仕方と結末が気になりつつ読んだ。
最後はどうなるのか、と。
そうか、結局はこの話はミステリーだったのかぁ。
オチとしては途中で読めてしまってつまらなかったけど、もしもあの後、彼と彼女がコンビを組む
ようならば、その本、読んでみたくなりました。

『光の箱』道尾秀介

上手い。そして優しい。
正直、この本の中では、伊坂を超えています。
叙述トリックも見事に決まっているし、サンタとカメラの伏線、巧みなプロット、人の心の中に潜む
黒い部分の話、そして何より、一通り騙された後の素敵な読後感と言ったらもう・・・。絶品!
個人的にこいつはかなりの大好物です。
伊坂好きな人は、ぜひ読んでください。
『ゴールデンスランバー』の多少強引なオチが受け入れられる人なら、この話も受け入れられると思う。

『ここじゃない場所』本多孝好

この本を昨年初読したときには『正義のミカタ』と同じ路線だなと思った。
そして昨年末、『チェーン・ポイズン』を読んで、昔の路線(『MISSING』など)に回帰したのだな
とも思い、嬉しかった。
で、また再び今日、この小説を読んだのだが・・・。
正直言おう。彼にはこの路線は向かない。
くすくす笑いながら読めるこの文章は楽しいんだけど、なんというか楽しさが軽い。薄い。
謎の4人の物語のサイドストーリーなのだろうな、たぶん。
ぜひ、この4人の本当のお話(たぶんもっとシリアスで、奥深いのだろう)を読みたいと思う。
(て、まだ発売されてないよね?一応、彼の本は全部持ってるつもりなんなんだけど・・・)



順番はつけないが、有川、道尾が良かったです。収穫収穫。
いい週末でした。





おまけ

貯まってたビデオも見てはさくさく消していった。
その中で、月9の「ヴォイス」を第1話から4話まで一気に見た。
面白すぎる。

会話の一言一言に無駄がない。伏線の貼り方が巧み!
ミステリー好きな人、キムタク主演の「HERO」が好きな人はぜひ見てみてください。


おまけ2

ガンダムOOの最近の展開の速さはハンパない!
今日の話は終わりへの序章という感じ。