特定支出控除で帰宅旅費を計上する場合、必要な書類が3つあります。

 

1つ目は、勤務先からの単身赴任証明

 

2つ目は、交通費の領収書

 

3つ目は、搭乗・乗車・乗船に関する証明書です。

 

1つ目の証明書は職場に申請するものですし、単身赴任であることは職場もよく分かっていることなので、理由を説明して、国税庁のウェブサイトにある書式で証明してもらえばそれでOKです。これに対して、2つ目と3つ目の書類は、移動の度にきっちり取得して、保管しておかなければいけません。

 

ただしこれには2つの大きな例外があります。

 

例外1は、電車や船などの運賃で1回の乗車・乗船の金額が1000円以下のものは領収書が必要ないというものです。たとえば新幹線の駅や空港に行くために乗った地下鉄の運賃が300円だった場合、この部分に領収書は必要ない、ということになります。

 

例外2は、1万5000円以下の鉄道料金に関する搭乗・乗車・乗船に関する証明書です。正確には「一の交通機関に関する運賃と料金の合計額が1万5000円以下」の場合なので、例えば新幹線で東京駅まで来てその先もJRで移動する場合は、JRの改札を出るまでの運賃と新幹線特急券代ということになりますが、これが1万5000円以下の場合は、3つ目の書類は不要です。

 

1万5000円以下というエリアは意外に広いです。東京仙台間(はやぶさ利用の正規運賃・料金で1万1210円)、東京大阪間(のぞみ利用の正規運賃・料金で1万4720円)や東京金沢間(かがやき利用の正規運賃・料金で1万4380円)などは、正規運賃でもこの例外の対象です。大阪博多間(のぞみ・みずほ利用の正規運賃・料金で1万5600円/ひかり・さくら利用の正規運賃・料金で1万5480円)は、そのままだと証明書が必要ですが、乗車券部分に往復割引を適用したり、エクスプレス予約や割引運賃といった方法を使うと1万5000円を切ってくるので、証明書なしで済ませることも可能です。

 

つまり、鉄道圏内の単身赴任でよくあるパターンは、だいたい証明書が不要なのです。ただし、この場合も領収書は必要なので、チケットは必ず領収書が出る形で購入する必要があります。

 

他方、値段に関わらず証明書から逃げられないのが飛行機です。東京福岡間などは、LCCを使えば5000円程度から、フルサービスキャリアでもセールなら1万円を切るようなチケットがありますが、飛行機は値段にかかわらず搭乗証明が必要になります。

 

国税庁のウェブサイトで特定支出控除についての説明を読んでいくと、この搭乗証明は所定の様式に必要事項を記入し、空港のカウンターで、会社名等と証明者の署名を得るということになっています。この書式の裏面には記入上の注意事項なども記載されていて、一見するとこの書式を使わないと駄目そうな感じがします。

 

ただ、飛行機に関しては航空各社のチェックイン機やカウンターで、機械発行の搭乗証明書の発券を受けることが比較的容易です。そのような証明書では本当に駄目なのか、税務署の相談窓口に電話してみました。この窓口で相談をすると、国税局の相談担当の方につながるのですが、その回答は、次のようなものでした。

 

・税法上は、搭乗証明について、特定の様式を使わなければならないということにはなっていない。

・ただし、税法が求める事項を網羅した証明書であることが必要であり、いつ、誰が、どの区間に搭乗したかが確実に証明されていなければならない。

・回答担当者が例としてANAの搭乗証明書の書式をウェブで確認したが、ANAの搭乗証明書はこれらの事項を網羅しているので、これで問題ない。

・他の航空会社でも、同様にこれらの項目を網羅していれば、確定申告に使える。

 

ということでした。つまり、様式に固執する必要はない、ということです。ただ、大手やその系列の航空会社はともかく、小さな航空会社やLCCの中には自前の証明書式がない会社もあるかもしれません。そういうときは、国税庁の様式に記入してもらうと、法令上必要な事項が自然と網羅されるので安心、ということのようです。

 

なお、証明書の発行日が搭乗日である必要はないとのことで、たとえば朝イチの便に乗ってそのまま出勤するような場合に、時間がなくて証明書を取りそびれてしまっても、後日証明書を得れば問題ないということでした。その場合、発行日の欄には実際に証明を受けた日の日付を記入し、搭乗日の欄には実際に搭乗した日の日付を記入してもらうことになります。

 

という回答を得た自分がどうしているかというと、結局、可能な限り国税庁の様式に記入してもらっています。何しろマイナーな制度ですし、国税庁のウェブサイトの説明を読む限りでは指定の様式での証明があった方がよさそうに読めてしまうので、本当に確定申告の際にそれで大丈夫なのかどうかはよく分からないところがあるからです。

 

搭乗証明書自体は、手書きのものであれ機械発行のものであれ、後から遡って取得できるので、問題があれば後から証明をしてもらうことも可能なのですが、搭乗証明書を後から遡って取得するのは、回数が多ければ多いほど面倒なので、私は毎回必ず指定の様式での証明書を取得するようにしています。

 

ただ、そうはいっても特定支出控除はマイナーな制度で、空港のカウンターの職員さんに様式を示して証明を依頼しても、それだけだと、どうしていいのか分からずフリーズすることも少なくありません。一応裏面に記入要領はありますが、それを確認して実際にどうしていいのかとなると、上司への確認が必要になったりするようで、結構手間がかかることもあります。他方で。「前にこんな風にやってもらったので、同じようにしていただけますか」と記入済みのものを示すと、比較的スムーズです。

 

ただ、比較的スムーズといっても窓口の担当者によって違いがあり、先例があるなら即OKとなるときもあれば(ANAは比較的そういう傾向です)、業務マニュアルを確認したり上司への確認に一度奥に戻るとき(JALは比較的そういう傾向です)、裏面の記載要領をきちんと読んでその通りに丁寧に記載しようとするとき(スカイマークでそのような対応を受けたことがあります)と様々です。また、会社に関係なく担当者による場面もあるようで、一番厳格なところだと証明事項は全て担当者が記入するといって白紙の証明書式にイチから記入されたこともありました(私は担当者に手書きで書いてもらうのが心苦しいので、搭乗区間などは予め記入したものを持参しているのですが、無記入のものを求められました)。

 

こんな具合で、担当者によってスムーズさが違うので、この処理にかかる時間は場合によって様々です。サンプルと同じようにささっと書いてくれて3分で終わることもあれば、上司への確認と担当者の直筆記入がコンボで来て15分くらいかかることもあります。朝イチ便で急いでいるときなどは、なかなかヤキモキします。

 

また、搭乗証明書は正式には「搭乗したこと」を過去形で証明するものなので、出発空港では発行できない(まだその飛行機に乗っていないから)、という扱いを受けたことも、何回かありました。そういうときは、「前は出してもらえた」と交渉するのも大変なので引き下がり、後日証明を出してもらうようにしていました。

 

何にしてもマニアックな手続で、空港の人も慣れていないので、毎回搭乗するたびに、この証明書をきちんと取得するのが最大の問題でした。でも、特定支出控除の確定申告をする以上、全ての帰宅について領収書と搭乗照明を取得して保管することは必須です。面倒ではありますが、いつも書類の束を持ち歩いて、証明書を取得して歩いています。

 


この記事は税に関する内容を扱っていますが、内容は無保証です。紹介している制度や具体的な控除額などは改正されることがあります。当ブログの情報により判断を誤ったとしても筆者は責任を負えませんので、予めご了承ください。