少し遅くなりましたが、2023年が終わり、特定支出控除への挑戦もゴールを迎えました。結論的には、特定支出控除の要件を満たすことができ、雇用主の証明も取得できたので、この後、確定申告に進みます。

特定支出控除を含む申告も電子申告ができるようですが、電子申告だとそれ自体は一瞬で終わってしまうので、一応きちんと申告書を作って、書類とともに税務署に提出しに行こうと思っています。領収書や搭乗証明も、もちろん全部持参します。ふるさと納税のときは証明書の類いも全部受け取ってくれますが、今回は領収書に搭乗証明に、軽くファイル1冊分の添付書類があります。果たして受け取ってくれるのか、それとも返却されて保管を命じられるのか、そのときのことは、また、記録します。

 ただ、実際に挑戦を達成したことが喜ばしいことなのかどうかは、何ともいえないところがあります。特定支出控除の対象になるということは、すなわち、何十万円から100万円もの交通費を自己負担したということです。給与所得控除の半額を超過した部分については控除が効きますが、逆に言えば給与所得控除の半額以内に相当する部分については別に安くはならないわけですから、これがお得なのかといえば、何ともいえないところです。医療費控除のようにハードルが10万円くらいなら別にいいのですが、給与所得控除の半額というハードルは、やはり半端ないものがあります。

 また、幸か不幸か2023年は航空券のセールが多かったので、多くの週末に往復2万円以内で帰宅することができました。私はかなり先まで航空券の予約を入れていますが、キャンセル料が安い時点でセールがあったらセール運賃に切り替える(セール運賃で予約を取り、もとの予約はキャンセル料を払って払い戻す)ということを繰り返したので、年初に想定したよりは、かなり航空券代を抑えられました。これ自体は嬉しいことなのですが、その結果、特定支出控除の対象になる部分がさらに小さくなり、労力に対するリターンは低くなりました。

 そんなこんなで、単身赴任の帰宅旅費だけに着目した場合、トータルの負担感が若干薄まるという以上の意味はないのかもしれません。その意味で、やはり特定支出控除制度は使い勝手の悪い精度なのだと思います。検索サイトで「特定支出控除」と入力すると、候補に「使えない」と出てくるのも、分かる気がします。

 ただ、こうなることは半ば織り込み済みの部分もあり、なので、特定支出控除には帰宅旅費だけでなく、スーツ代込みで参戦しようというのが当初からの目論見でした。具体的には、従来毎年2着(夏冬各1着)を購入し、耐用を過ぎたスーツを2着ずつ退役させていたところを、2023年は3年分、6着購入して向こう3年分のスーツ代を集中させ、これに特定支出控除をかけることで、実質的にスーツを割り引き購入しようという計画です。

 こちらの目論見は、計画通り達成できました。

 私は学生時代まで結構しっかりとスポーツをしていたためにガッシリ体型で、標準サイズ的にいうと上半身と下半身のサイズが異なっていて、普通のレディ・メイドスーツがほぼ着られません。必然的にメジャー・トゥ・オーダーになるので、これを税金の還付という形で割引適用できるのは、それなりに有り難いことでした。

 そうなると2024年はどうするか、ということですが、2024年は特定支出控除に挑戦しません。

 特定支出控除は、ほとんど使う人がおらず、また、実際に使うハードルが高い制度です。そんなマニアックな制度を実際に使ってみようという好奇心半ば、実益半ばで2023年は挑戦しました。そのハードルが高いことは、金額的にも労力的にも、よく分かりました。また、2023年は特定支出控除を使うために有償フライトにこだわりましたが、そのためもあって、ポイントやらマイルやらもずいぶん貯まりました。トータルの支出を抑えるという見地から、これらの有効活用ということも考えており、そうすると益々、特定支出控除の恩恵を受けられる額が減ってしまいます。

 3年分スーツも既に買ってしまいました。2024年は、もうスーツを買う必要はありません。帰宅旅費だけでは労力に見合う控除にならない可能性が高いことはよく分かったので、もういいか、という心境です。

 しかし、こんなにハードルの高い制度もどうなのだろうという感じはします。採用時から単身赴任という形なら納得ずくかもしれませんが、もともと家族と同居していた場合、業務命令で突然遠方に異動になって、そのために想定外の出費が増えるのは、あまり納得感の高い話ではありません。もちろん、そういう出費が生じるのはそんな異動を命じた無体な雇用主に責任があるわけなので、国が税金の控除で面倒を見るのは本筋ではないというのは理解できます。理解はできるのですが、やっぱり他心赴任って、きついです。少なくとも子どもがいる場合には単身赴任を禁止する法律とか、できないもんでしょうか。

 きつい思いをした分、何かいいこと、ないかなぁ、そんなことを感じた、2023年でした。