2023年夏、日本は台風6号と7号に相次いで襲われました。被害にあわれた方々に、まずはお見舞いを申し上げます。

そして、被害とまではいかなくとも、この2つの台風は交通に大きな影響を及ぼしました。6号は数日にわたって沖縄に居座り、交通が途絶しました。7号はUターンラッシュのピークというタイミングで近畿地方を横断し、ほぼ1日、中国地方、近畿地方、東海地方の交通機関は動きませんでした。翌日も、その余波の雨で、東海道山陽新幹線は使い物にならないレベルの運転見合わせと遅延になりました。

私はこの2つの台風の影響は受けなかったのですが、単身赴任生活で年間何十回と飛行機に乗っていると、台風や大雪の影響を受けてしまうことはあり、似たような状況に直面したこともあります。ただ、場数を踏むと対処法がある程度分かってくるのも事実です。そんなわけで、台風を含むフライトイレギュラーについて何回かに分けて書いてみようと思います。

1回目は、2022年台風14号です。

 

この台風は、2022年9月の3連休(9月17日~19日)に日本を直撃しました。3連休ですから当然、赴任先の福岡から東京に帰る予定にしていたのですが、この時期は夏休み明けということもあり、連休直前の金曜日も、連休明けの火曜日も外せない仕事が入る可能性が高く、結局、17日のアサイチ便で東京に向かい、19日の夜便で福岡に戻る、という旅程をかなり早い時点で予約していました。3連休は早めに予約しないとすぐにチケットの値段が高くなるので、かなり早い段階でチケットを購入してしまうことが多いです。

ただ、東京から福岡へ戻る便については、羽田発の完全な最終便(スターフライヤーとスカイマークの20時発便)を選ぶかどうかは若干悩みどころでした。当時は福岡空港の門限問題がクローズアップされるよりは前でしたが、そういう問題が存在すること自体は知っていたからです。

というわけで、最終便の少し前の便ということで、羽田19時35分発のJAL335便に予約を入れました。ANAではなくJALにしたのは、購入時点で値段が少しだけ安かったからだった記憶です。

ただ、結果からいうと、これは痛恨のミスチョイスでした。なぜそれがミスチョイスになったのか、そしてそれをどうリカバーしたのか、というのが、このときの経験と教訓です。

話は2022年9月15日(木曜日)時点に遡ります。日本の台風予報は5日先まで出るので、この時点で19日の月曜日までの経路予報が見えてきました。コースは九州に上陸後日本を縦断するというもので、19日(月曜日)の天候は全国的に最悪の予報になっています。ただ、偏西風が弱いためか予報円が大きく、台風の速度が遅ければ夜まで福岡空港の天候不良で欠航のリスクが、逆に速度が早ければ羽田空港の天候不良で欠航のリスクがありそうで、この時点では19日に影響がありそうなことは確かであるものの、どっちの空港がよりヤバそうかということまでは分かりませんでした。

さて、台風で予約便が欠航になる場合、とりえず代替便を普通運賃で予約して、代金決済をせずに空港に行けば振替ができることになっています(そうするとカウンターで振り替えて発券してくれます)。ただ、この時点で19日のJAL335便がどうなるかは全くの未定でした。その状態で振替用の普通運賃の予定を入れた場合に振替ができるのかどうかは、やったことがないため自信がなく、万が一、19日の便が欠航する一方で振替ができないというようなことになると、高額な普通運賃を払うことになりかねません。

これはかなり痛い出費なので、マイレージ特典に空席があるならそれを活用しよう、と考えて検索してみたところ、15日夜の時点で、20日の朝6時25分羽田発のJAL303便に空きがあったので、マイレージ特典で予約しました。これが飛べば、一応朝9時には福岡で出勤できます。この当時、JALのマイレージ特典航空券は予約変更が可能でしたから、このとき使わなければ別の日に予約をチェンジしてしまえば無駄にはならないという読みもありました。なお、このときJALのマイレージ特典を選んだのは、単にマイルが余っていたからです。

16日(金曜日)の予報では、台風は19日の夜に中部地方あたりにいる可能性が高いという感じだったので、当初の予約便で飛べるかと期待して、連休を迎え、予定通り17日(土曜日)の始発便で東京に帰りました。

17日(土曜日)、台風の予報は若干遅めに修正される傾向でした。台風は、19日(月曜日)の日中に九州北部を直撃し、その後東進する予報です。ただ悩ましかったのは、19日の福岡空港が終日影響を受けた後、東に移動した台風で20日の羽田空港が影響を受ける可能性が残っていて、その場合、今持っている2つの航空券がどちらも欠航しかねないということでした。このパターンは最悪です。そして、17日(土曜日)の夕方、19日(月曜日)のJAL335便が欠航になったというメールが来ました。

他社の状況はというと、19日(月曜日)の朝から昼過ぎにかけての便は欠航が決まりつつある流れでしたが、夜の便はまだ欠航判断にはなっていませんでした。早々に終日欠航を決めたJALとは判断方針が分かれたわけです。

この時点で私が持っていた命綱は20日(火曜日)の朝イチ便のJAL303便だけですが、さすがにこれ一本に賭けるのは心もとない感じがします。この便は早朝便なだけに、台風で空港までの交通に問題が出たり、タクシーが捕まらなかったりするとかなりシビアです。これを最後の頼みにするなら、19日(月曜日)の夜のうちに羽田の近くに移動して、できれば空港ホテルに泊まっておいた方がよいかもしれない、と心づもりしました。

けれど、まだとれる選択肢はあります。今更ですが、19日(月曜日)の選択肢を増やすのです。1つは、19日に福岡に行ける便で予約可能な便でなるべく安いものということで、その時点で予約が可能だった中で一番安かった、19日の20時羽田発、スカイマーク27便に予約を入れました。3連休のそんな時期に空席があるのかという感じですが、1社が欠航を決めるような段階になると、予約をキャンセルしたり変更したりする人も出てくるので、こまめにウェブを見ていれば、1席ぐらいの空きが出ることは実際にあります。こういうときは、何はともあれ諦めないことです。

さて、このスカイマーク便の運賃は即日決済なのでその場でカード決済しています。この便が飛べば出費は有益で、使わないことになるJALのマイレージの予約は別の日に変更してしまえばよく、仮にこの便が欠航すれば代金は返ってくるので、出費は増えますが無駄打ちはありません。

さらに、19日深夜のスターフライヤー北九州便が株主優待運賃で予約できることを見つけ、22時羽田発のスターフライヤー93便を予約しました。この便は23時40分に北九州空港に到着するというかなりエクストリームな便ですが、とにかく19日(月曜日)のうちに福岡県に入れれば、後は何とでもなります。また、株主優待運賃は出発当日に空港カウンターで決済すればよいので、予約を入れるだけなら出費もありません。こういう場合に備えて、私は株主優待制度がないスカイマーク以外の3社の株主優待券を常備しています。

この時点で、3つの航空会社に両立しない予約を複数突っ込んでいます。航空会社によっては、搭乗が不可能な組み合わせで複数の便の予約が禁止されている場合がありますが、これはあくまで、同一の航空会社でそのような予約をすることが禁止されているだけです。なので、別の会社で両立しない予約を入れるのは違反ではありません。ただ、違反ではないのですが、乗らないかもしれない便の予約を入れるのは気持ち的に申しわけないですし、本当にその便に乗りたい人にとっては迷惑になります。

なので、その後定期的にスターフライヤーの空席状況を確認して、満席になったらリリースを検討しました。ただ、あまりにエクストリームな時間帯の便だからか、最後まで満席にはなりませんでした。また、19日にスカイマークで福岡に到着できたら、20日のJAL303便は即変更して、少なくとも19日中に特便割引で買える時間が残るようにする心づもりでした。

なお、この際の検討でANAが外れた理由は、検索した時点で満席だったという単純な理由です。ANA便にも多くの欠航が出ており、その予約を持っていた人たちが19日夜の便に予約を振り替えたのでしょう。これは結果論ですが、スカイマークもスターフライヤーも羽田のターミナルが同じ第1ですから、何かのときの行き来も楽で、ドタバタの割にはよい形の予約ができたと思います。

当の19日になってみると、台風は夕方頃には九州を抜けそうでした。そういう予報であることもあって、JAL以外の3社は夜の便の欠航をまだ決断していません。他方で、20日の昼までの予約が可能な福岡便は全社満席になっていました。逆に、このような状況でも北九州便は、私が確保した19日の最終便を含めて空席があったので、直行にこだわらなければもっと早く福岡に着ける方法はあるのに・・・と思ったのでした。この辺の代替オプションをどれだけ想定できるかも、こういう場面を切り抜ける上では重要になってきます。

というわけで、19日夕方、羽田空港に向かいます。この時点でANAやスカイマークの福岡便が出発しているという情報があり、何とかなりそうな感じになってきました。さらにANAは、19時発で臨時便まで出すようです。

しかしこうなると、早々に欠航になってしまったJALは一体何だったのだろうという感じがしてしまいます。ターミナルが閑散としていたので、JALのカウンターで欠航が取り消しになることはないのか聞いてみたのですが、一度決まった欠航が撤回されることはないのだそうです。いち早く代替手段を検討できるという意味ではこの姿勢にもメリットはありますが、今回の台風のように直前まで予報円が大きくて、速度の見込みがズレていくような台風の場合、損切りにも程があるという感じです。

で、結果的には19日のスカイマーク最終便で福岡に飛べました。搭乗が始まった時点で、仮に福岡に着陸できずに引き返すことになっても、北九州行きのスターフライヤーには間に合わないので、その予約もキャンセルします。そして、スカイマークの最終便は無事に福岡に到着しました。

福岡に到着した時点で、20日朝のJAL303便は特別取扱(予約種別にかかわりなく予約変更可、無手数料払戻可)の対象になっていました。台風が東日本に動いていくので、朝の便も一応何があるか分からないということでしょうか。いずれにしてもキャンセル料などがかからないということなので、福岡に到着した後にこの便もキャンセルです。この便を予約するために使ったマイルは全額戻ってきました。

もちろん欠航になったJAL335便の料金も全額返金されました。ただ、早割だったJALの運賃よりも直前で手配したスカイマークの運賃の方が高かったので、どちらにしても痛い出費ではありました。各航空会社が全滅する状況ならこれも仕方ないのですが、結局この日の福岡行き最終便が欠航したのはJALだけだったので、ちょっと悲しかったです。

もちろんこれは結果論で、飛んだはいいけれど引き返すことになったりすると、疲労が半端ないことになります。飛びはしましたが、スカイマーク便も相当揺れましたし、相手がお天気では何があるか分かりません。引き返しても大丈夫なように20日の朝イチ便の予約は残してありましたが、正直夜中に引き返しになって、翌日の朝イチ便となると、体力的に限界近くなるので、これも辛いです。

とはいえ、連休の予約は場合によっては1年前の発売日とかに予約を入れるので、予約時点でぞの日にピンポイントで台風がヒットするかどうかなんて分かるはずもありません。お天気は仕方ないので選択肢を広めに持っておきつつ、危なそうなときは使える手札の検索を尽くしてできる限りのことをするしかないという話なのかもしれません。