朝からしとしと雨が降っています。
帰省3日目。
今日はまとまった雨になるのだとか。
こんな日に、行きたいと思っていた素敵な場所があります。
少し長めのドライブになりそうです。
さいわい、ほとんどのCDは実家に置いたままなので、音楽は選び放題。
鬱々とした空模様には、それにふさわしい音楽を。
ムックの初期の音源たちを聴きながらまいりましょう。
鉛色の空の下をひた走り、向かったのは、隣県にあるお気に入りの温泉です。
その名は「山頭火」。
ガラスとモノトーンでまとめられた、シンプルでスタイリッシュな空間です。
ゆたかな湯をたたえた広い露天風呂。
大理石風の意匠を凝らした壁には、俳人・種田山頭火の句が散りばめられています。
裸になってお湯に身をまかせ、空を見上げ、風を感じる。
そんなとき、山頭火のことばは、五感で感じる自然の素晴らしさを、さらに味わい深いものにしてくれます。
「花いちりん、風がてふてふをとまらせない」
「炎天の影ひいてさすらふ」
「夕焼うつくしい旅路もをはり」
「暗さ匂へば螢」
短い言葉のなかに美しい自然があり、四季があり、人間の営みがあり…
どんなに長いあいだ眺めていても、決して飽きることがありません。
今日は、これらの句を味わうためにやってきました。
「あの雲がおとした雨にぬれている」
「雨ふるふるさとはだしであるく」
「雨にうたれてよみがえつたか草も人も」
なかなか、心ゆくまで雨にうたれるという機会はないものです。
この露天の湯なら、じっくり雨に濡れ、これ以上ないほど雨を感じることができる。
湯船いっぱいに広がる雨の波紋…
高いところから見ればただの「波紋」でも、水面の高さの目線で見れば、ちいさな雨粒が無数に水面を跳ねているのがよく見えます。
思いがけない、ポップでメルヘンな世界。
アングルが違うだけで、こんなにも違うものが見えるなんて。
真下から見上げる、落下してくる雨粒たちも。
そして、ふだん触れることのない、肩や背中に落ちてくる雨の感触も新鮮です。
「ゆっくりしていってくださいね。貸切ですよ」
受付のおばさまの言葉どおり、広いお風呂には、わたし一人。
わざわざ土砂降りの日を選んで来た甲斐があったというものです。
ゆっくりと山頭火のことばを味わいながらの入浴は、とても素晴らしい経験となりました。
次は、夜を愛でに来ようかな。
―――“三日月、遠いところをおもふ”
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体も心もほかほかになったら…
こちらの郷土料理をいただきます。
「瓦そば」。
カンカンに熱した瓦の上に、茶そば、甘辛く煮た牛肉、錦糸卵、ねぎや海苔などの薬味がのっています。
あたたかいつゆにくぐらせていただきます。
これはこの辺りではポピュラーなもので、スーパーなどでも、茶そばとつゆが一緒になった「瓦そばセット」が販売されています。
かつては、休日のお昼など、大きなホットプレートで瓦そばを作り、家族で囲んだものです。
懐かしい光景も思い出させる、美味しい名物料理でした。
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みなさんに差し上げたお土産が、ぞくぞくと形を変えて戻ってきはじめました。
メロンにスイカに、畑で採れたばかりのナスやトマト!
留守にして帰宅すると、お勝手口にドンと置いてあるのが田舎流です。
うれしいな。
おいしいな。



