3年前の3月11日―――
空は晴れ渡り、春らしい陽気でした。
朝から、卒業式に向かう袴姿の女子大生をたくさん見かけました。
駅の階段で、すれ違ったおじさんのごきげんな鼻歌が耳に残りました。
あの日―――
とても素敵な朝だったことをよく覚えています。
あの日、わたしは教壇に立ちました。
使用した教材の一つがこちらです。
陰陽座の「美旋律絵巻」という写真集です。
2003年の発売以来、ずっと大切にしてきたわたしの宝物でした。
留学生には、日本のカルチャーに興味を持つ人が多いので、授業の導入に使用するために持参したものでした。
あの瞬間―――
震源地から離れた東京も、大きな揺れに見舞われました。
わたしがいた学校のビルは、地盤の軟弱な土地にあったようです。
高層階にあった教室は、激甚な揺れに見舞われました。
テレビは落ち、柱にひびが入り、机の上のものすべてが床に散らばりました。
5分近くに及ぶ揺れが収まるのを待ち、貴重品だけ持って、全員で近くの公園へ避難しました。
その後、友人たちと助け合い、留学生たちを連れて、徒歩で帰宅しました。
20キロほどを歩き、帰宅した時には日付が変わろうとしていました。
数日後―――
片付けに訪れた教室で、わたしたちは息をのみました。
教室という小箱を、誰かがめちゃくちゃに振り回したかのように、すべてが床に散らばり、壊れ、倒れていました。
わたしは置き去りにしてしまった写真集を探しました。
はたして…
折り重なるたくさんの教科書やノートの中から、それは出てきました。
誰かのコーヒーに浸り、汚れ、ページはもう開かない状態で…
拾い上げ、
嘆き、
そして思いました。
あの日を語るものとして、この宝物は別の意味を持ったのだと。
あれから3年―――
折にふれて、もう開かないこの写真集を眺めては、あの日の悲劇を思います。
失われたすべての命に、心からの祈りを。
大切なものを失った方々に、たゆみない共感と善意を…
