どこにこだわるか | コンサートホールのお話など

コンサートホールのお話など

レセプショニストとして働いているコンサートホールでのお話や、クラシック音楽やとりとめのないことなどを綴っています。

所属内外、色々な場所で勤務するなかで、イロイロと気になることがあります。


それは、各々のこだわる所、スタンスが違う為で、同じ業務内容のはずなのに、かなり違ったやり方があります。もちろんどんな業界・仕事に於いてもそれは同じことですが…!


他所を知らず、ずっとそこに勤務していれば、当然そこではエキスパートになれますが、より素晴らしいものを知っていると、もどかしく思いながらもそこのスタイルに徹することになります。


このようなギャップに一番敏感なのは、きっと様々なホールでコンサートをお楽しみになるお客さまご自身なのだろうなと思います。お客さまは全く知る由もない部分での細かいこともありますが、結局は雰囲気などで滲み出るものをお感じになるのかもしれません。


そのような事務的なことの他に、時に違和感のあることもあります。お客さまに対して、私は公平でいたいと常に思っています。


ですが、VIPだの、著名人だのという方々がお越しになると予想される場合に、ミーティングで「特に粗相のないように。」という伝達事項があるとちょっと違和感を覚えます。言わんとすることはわからないわけではありませんし、もちろん、公平であるべきは当然という前提があることでしょう。


演奏会一つとってみても、実際問題、チケットの値段がある程度示すように、正直「格」というものはあるのは事実だと思います。


私が最も印象に残り、思わず嬉しくなったのは、ホールもお客様も威信をかけて気合を入れる、ある演奏会の始まる前のミーティングでした。


「この日のためにやっとの想いでチケットを買っていらっしゃるお客さまや、一張羅で来る人もいます。もしかしたら一生に一回かもしれません。でも、その想いを大切にしましょう。決して恥ずかしくお感じになることのないようにおもてなししましょう。全てのひとに最高に楽しんで戴きましょう。」というような内容です。


ドレスコードがあり、稀にその意味をきちんと理解できずにいらっしゃるお客様、あるいはそのお客さまにとって精一杯の限界があると想像できるのでした。


もしかしたら、他のお客さまに対して失礼なので、さすがにTシャツとジーンズでは入れてもらえなかったかもしれませんが、それなりのきちんと感があればウェルカムとしていました。その人の精一杯を受け入れるということでしょう。


ホールにお越しになる、本当に全てのお客さまが、お一人お一人、同じで、大切なのだという責任者の想いが一所懸命スタッフにも伝えられることは素晴らしいことだと思います。


こういうシチュエーションは、一流レストランや、その他ご想像のつくところが他にもあることでしょう。


本物の伝統を地道に積み重ねていく作業の途中で、築き上げていくことの重みを感じることができ、目指す所に確実に歩んで行っていることがお客さまにも伝わっていくのではないかと思います。


そのような場所には普段からVIP、著名人というお客様がごく普通にサラッといらしていることと思います。


もしかしたら個人の中身・美しさへの積み重ね方の道にもにも通ずるのかな…と思います。