献呈のなかに~アヴェ・マリア | コンサートホールのお話など

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レセプショニストとして働いているコンサートホールでのお話や、クラシック音楽やとりとめのないことなどを綴っています。

今年ははよいクリスマスをお過ごしになりましたか?聖夜に、人それぞれに思い浮かべる曲、というものがあることと思います。

私の子どもがカトリックの幼稚園に通っていた頃、毎年クリスマスに行われたイエス・キリストの誕生の物語を演ずる聖劇で、大天使ガブリエルがマリアのところに現れる受胎告知の場面では、決まってシューベルトのアヴェ・マリアを流していました。

ですので、私のなかではアヴェ・マリアはルーベンスやエステバンの受胎告知を描いた絵画と共に、すっかりマリア様の受胎告知の曲、というイメージになっていました。


エステバン
$ピアニスト松浦健さんとコンサートホールと ~松浦健さん応援しています~


ルーベンス(暗くてわかり辛く、すみません)
$ピアニスト松浦健さんとコンサートホールと ~松浦健さん応援しています~


ですが、シューベルトのアヴェ・マリアは、宗教的な意味合いはないことは有名です。ウォルター・スコットの抒情詩「湖上の美人」のドイツ語訳に曲をつけたもので、歌曲集「湖上の美人」のなかの『エレンの歌 第3番』というのが、いわゆるシューベルトのアヴェ・マリアなのです。

ちなみにアヴェ・マリアとは、ラテン語で「めでたしマリア様」という意味だそうで、エレンが祈りの時に口ずさんだそうなのです。

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ところで、幾度か記事でも取り上げさせて頂きましたシューマンの歌曲集「ミルテの花」Op.25から『献呈』は、私の大好きな曲ですが、その献呈のなかにも、後奏の部分でシューベルトのアヴェ・マリアの冒頭のメロディーが2回繰り返され、登場するのです。


シューベルト(1797年生)のアヴェ・マリア=『エレンの歌第3番』作品52-6(D.839)は1825年に作曲されています。

シューマン(1810年生)の『献呈』は1848年の作曲です。歌曲も多く書いたシューマンのこと、当然エレンの歌は意識していたのでしょう。

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『エレンの歌第3番』

アヴェ・マリア、慈悲深き乙女よ
おお 聞き給え 乙女の祈り
荒んだ者にも汝は耳を傾け
絶望の底からも救い給う

汝の慈悲の下で安らかに眠らん
世間から見捨てられ罵られようとも
おお 聞き給え 乙女の祈り
おお 母よ聞き給え 懇願する子らよ

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ローベルト・シューマンがクララに結婚前夜にプレゼントしたこの曲・・・。

結婚を父親に猛反対されていたクララは果敢に行動を起こし、そして祈ったことでしょう。クララのそんな姿と、そして自分達、自分の祈り、あるいは今後の自分達へと重ね合わさったのでしょうか。

とにかく、シューマンの恋事情は別としても、私はこの『献呈』のなかの「アヴェ・マリア」の旋律が出てくる部分は特に大好きです。聴く毎に切なくなります。

リストもまた、シューベルトのアヴェ・マリアを編曲していますね。リスト編曲の『献呈』では、最後のアヴェ・マリアの後華やかに曲が閉じられますが、リストもこのアヴェ・マリアのメロディーは大切に入れたのではないかな~?(だといいな・笑)と思います。

ところで、真央ちゃん、今夜の滑りには涙が出ました。音楽で涙を流す時と同様の感動でした。真央ちゃんも実は過去に『献呈』でも滑っているのですよね♪今回の愛の夢といい、私の好きな曲ばかり、嬉しいです。優勝、おめでとうございます!