四つの厳粛な歌~クララ亡き後 | コンサートホールのお話など

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レセプショニストとして働いているコンサートホールでのお話や、クラシック音楽やとりとめのないことなどを綴っています。

前回、ブラームスがクララに出会ってから後、彼の作品は全て世に送り出す前に、クララに見せていたという話をしました。


そして、クララの亡き後、初めて出した曲は、誰に見せたのかと。


答えは、ローベルトとクララの長女、マリエに手紙とともに送付したのです。もちろん、添削の意味はありません。彼の手紙にはこう書いてありました。


『「厳粛なる歌曲集」をお受け取りになっても、どうか誤解なさらぬように願います。お宅宛てにまずお送りする懐かしい習慣は別として、この度の歌曲は真実あなたにお送りしたのです。


 私は5月の最初の週にそれを作曲しました。あのような思いは、お母様の悲しいお知らせを待つようになる前から、私の心のなかにあったのです。人間の心の深みには、詩なり音楽の形をとるまで無意識のうちに彼を動かし進めてゆく何かがあります。あの歌曲をあなたは終わりまで弾くことはお出来にならぬでしょう。あの歌の言葉は、今のあなたをあまりに強く打つでしょうから。どうかあの歌曲は、そのままにしておいて、あなたの最愛のお母様に捧げられた、一つの真実の死と見て頂きたくお願い申し上げます。』


最後に、もう一つのエピソードを次回に。