昨夜の満月は美しかったです。
さて、昨日の結婚記念日の記事に続いて、今日もおめでたいですよ
「お誕生日」なのですから。そう、シューマン・クララの。
ローベルトから愛のこもったプレゼントが贈られますが、少なくとも私の知る限り、クララの生涯で2度、同じようにしてプレゼントとして贈られたものは何かご存知でしょうか
そのモノも羨ましいですが、演出がまた粋です。ある年の誕生日のお話をご紹介させていただきます。
14回目の結婚記念日、クララは日記にこう記しています
「愛し愛される夫とともに、６人の健やかな愛らしい子供たちにかこまれた、これ以上幸福な結婚記念日があろうか。この豊かな祝福に、私の心は感謝に満ちている。天よ、われらをまもりたまえ。」
そしてその翌日…誕生日の日記
クララ自身の言葉から伝わってきます
長いですが、そのままご紹介します。
「9月13日。輝かしい朝だ。すばらしい上天気である。ロバートの楽しそうな顔は輝いている。彼がなにを準備しているのか、私には想像がつかなかった。ディートリッヒと彼は、何かこそこそ話しあっていたが、やがてちょっと外出してまた帰ってきた。これで私が好奇心をもたなかったとしたら、不思議である。12時に、われわれは馬車でベンラートにでかけ、心は満たされた。彼の顔は、私の言葉が彼の計画に疑問をもっているようだと思われたときだけ少々曇るのであった。」
ローベルト、可愛いですね。そして、少々曇る顔は条件がそれだけなんて、クララはどんなに愛されていると感じながら暮らしていたことでしょう。そして、日記は続きます。
「5時ごろに帰ったとき私は全く驚かされた。花に飾られたグランド・ピアノが部屋の中央に置いてあり、二人の紳士と婦人が立っていた。私が部屋に入っていった瞬間、彼らは歌いだした。その歌は・・・13年前にロバートがヘルテルのピアノを私に贈ってくれたときに、私のために書かれた詩が、そのまま歌われたのである。
（13年前というのは、二人の結婚について、裁判で争っていたクララの父ヴィークに勝訴し、結婚の日取りが決まったときにも、ロバートはヘルテルのグランドピアノを贈り物として届けています。その時のクララは日記に「ピアノは花で飾られ、花のなかに愛の詩が添えてあった。」と記しています。）
それでも私はまだ彼の贈り物のことが、十分にのみこめなかった。ピアノは歌のために一時的にもってきたものと思っていたのであった。ロバートがピアノは私のためにくれるのだといったとき、私は大きな喜びと不安に圧倒されてしまった。・・・あまりに立派な贈りものであったから・・・私たちの生活にはあまりにも高価であったから・・・しかしわたしが切望していたものであった。そう告げたときのロバートの様子は、真に幸福そうであった。ついに不安は幸福感に征服されてしまった。
そして私はまたピアノの上におかれていたものを見て、ふたたび同じ悲しい気持ちにおそわれてしまった。あまりに嬉しすぎたのである。そこには彼のたゆまぬ刻苦の結晶である新作品がおかれていた。私のために作曲してくれた、管弦楽伴奏つきの≪コンツェルト・アレグロ、作品１３４≫と、ヨアヒムのために作曲したバイオリンと管弦楽用の≪幻想曲、作品31≫、それにファウストの序曲の総譜とピアノ独奏及び二重奏用の編曲とであった。
私の感動をとうてい書き記すことはできないが、心はロバートへの愛と尊敬にあふれ、この大きな幸福をあたえたもうた天への感謝にみちてくるのであった。世界中で私は一番幸福な妻だといったら、私はあまりにもうぬぼれが強すぎるであろうか・・・。」
やったね
ロバート
この夜、新しいピアノによって全部演奏され、来客が去ってからも、二人は長いあいだ静かにすわって、幸福な思いにひたっていた、とあります。
その一方では、二人の離別の日が刻一刻と迫ってきていました。
それから、ヨアヒムとは、シューマン夫妻の愛するバイオリニストで、この後にヨアヒムがブラームスを連れてくることになります。ブラームスのことはシューマン夫妻にとって、「何よりも尊い美しい贈りものであった」と訳者原田光子さんが書いておられます。ブラームスについてはまたの機会に・・・。
（画像は特に文章とは関係ありません）
