場内チェック | コンサートホールのお話など

コンサートホールのお話など

レセプショニストとして働いているコンサートホールでのお話や、クラシック音楽やとりとめのないことなどを綴っています。

コンサートホールで働く者の間では、「場内」というと、客席を指します。ですので、タイトルの「場内チェック」というのは、客席内の点検という仕事のひとつです。


それは、演奏会の始まる開場前と、終演後お客様が客席を退出された後の2回、必ず行います。


順番が前後しますが、後者の終演後の場内チェックは、想像がつくことと思いますが、忘れものや落し物がないかの点検と、その場に置いて行かれたチラシ等の回収、飴やガムの包み紙、ティッシュペーパーというような落ちているゴミを拾って捨てます。

もう一つ、大切なことは、それらをやりながら、座面が下がったたままの座席を戻しつつ、既に戻っている分も含めて、全座席を一つずつ、軽く開いては戻すという作業をしながら、座席の不具合がないか、あるいは座席と床に汚れなどがないか、ということを見ます。


忘れ物などが見つかった場合は、その発見場所をメモ(座席番号)をし、仲間がいれば届けてくる旨を一言伝達し、即刻、その公演での忘れ物などを対応する担当者に届け出ましょう。お客様がご自身で気がつかれて、スタッフにお尋ねになったときに、まずそこで確認していただき、なければ次に座席を探す、という手順を踏むように決めておくき、情報を共有するとスムーズで、お客様をお待たせしません。そのために一旦座席のチェックを置いてでも、即刻届け出ます。


基本的には まだ客席にお客様のお姿があるうちから始めることのないよう、客席の扉を閉めてから行いましょう。ただ、あまり神経質になりすぎず、ほとんど誰もいないのに、まだ3,4人の人がなかなか出られない・・・というような場合は、2階と1階は別に考えたり、大きなホールですと、例えばセンターにお客様がいらっしゃっても、そこからかけ離れたエリアであれば、そっと行うなど、臨機応変に素早い終演後の動きも必要です。


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そして、開演前のチェックは、出演者のリハーサルが終わったら、ということに気を配りましょう。ただし、ギリギリの時間になってもまだ終わらない場合は、関係者のしかるべき人に開場時間が迫っているので、座席のチェックに入ってもよいか、ということでOKをもらい、なるべく靴音などに気を遣いながらそっと静かにチェックに入ります。この作業についてはプロの音楽家ならどこでも経験するため、すぐに分かっていただけます。


まだ演奏家が舞台上にいらっしゃったり、あるいはまだ調律中ということもよくあることです。そんな時は椅子を上げ下げする音は、結構なバタバタという音がするものです。この音をさせないように、また、靴音にも気を配ります。となると、動作が遅くなる分時間もかかりますので、特に慣れていない人の場合は時間に余裕をもってOKをもらってくださいね。


そして何故、前回公演の終演後に入念な座席のチェックを済ませてあるのに、またやるのかは、「2度手間ではないか?」と思われるでしょうが、実はリハーサルで関係者が不特定に座席に座り、そのまま座面を戻さないことが非常に多いので、お客さまには快適に、美しい客席でお迎えしましょう、ということと、それに、案外前回見落としているものが見つかることもあるのです。(本来あってはなりませんが、残念ながら時々あります。前の公演のチケットが隙間からみつかるようなこともあります。埃が落ちていることもあり、もちろんそれらも拾います。)


更に、例えばカメラマンが陣取る座席や、バンダの照明用や撮影のためのコンセントなどが使用される場合は、その場所の状態の把握とともに、お客様が躓くような配線になっていないかなどの確認もできます。



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全体として。



会場内の照明が暗ければ、ペンライトを使用しましょう。また、座席の下を一生懸命見がちですが、多くは背もたれの後ろ側から真下を覗き込んだ時に何かを見つけやすいですので、座席の下と併せて背もたれの後ろ側からも除く習慣をつけるようにしましょう。


もし、汚れがみつかった場合は、開場前の場合は自分達で対処できることはして、できないことは、急ぐ場合はすぐに事務所など(そのホールの管理窓口)に連絡すれば、清掃に入ってもらえる場合なども考えられます。


この「場内チェック」は、レセプショニストであるならば、何処へ行っても同じと思いますが、案外、主催やボランティアだけで演奏会を運営する方々の間では、持っていない知識のようです。実際に、私がボランティアグループのお手伝いをさせていただいた機会などに、軽く忘れものがないか程度には気を配られるかもしれませんが、このようなことはなさっていませんでした。


レセプショニストなしで、ただ単にホールをレンタルしただけの公演の次に出勤すると、結構チケットやハンカチなど、色々と出てきたりします。是非、「場内チェック」を知り、行って頂きたいと思います。