扉とマナー | コンサートホールのお話など

コンサートホールのお話など

レセプショニストとして働いているコンサートホールでのお話や、クラシック音楽やとりとめのないことなどを綴っています。

前回コンサートホールに於ける客席扉のあらましについて豆知識ということでお話をしました。今回は、マナーの観点からお話をしたいと思います。


コンサートの進行と扉の開閉については、密接な関係があるというお話をしました。また、レセプショニストは自分の担当の扉を責任を持って担当しなければならないということも。ドアがきちんと閉まっていないと、開演しないか、開演しても音響的に正常でない状態になってしまいます。


●途中入場について

よく、お客様からご不満の声を拾うのが、途中入場で、レセプショニストのご案内した扉から「しか」ご入場いただけない、ということがあります。「自由に好きな扉から入ったっていいじゃない」というお怒りの声です。


途中入場の場合は、客席内でレセプショニストが居る扉からの入場が基本となります。それは、予定外に、中に入ったとたんに曲が始まってしまった場合は、その場で次のタイミングまで立ち見して頂いたり、空席があった場合は状況が許す場合はとりあえずお掛けいただいたりと、指示を出す必要があるためです。


クラシックの演奏会では、たとえ曲と曲の間であっても、開演と同時に作り上げられている雰囲気、空気を非常に大切にしますので、本来ならば途中入場そのものさえ、開演時からいらっしゃるお客さまにはご迷惑な話ということが出来ます。実際に、そのことでクレームがつくことも時々あります。


お気づきかどうかわかりませんが、演奏者ご自身が、途中入場が落ち着くまで、舞台の上から待って、確認してくださることも多いのです。


聴いていただきたいという、コンサートホールと出演者(主催者)双方の気持ちから、事前に打ち合わせて、最低限の許容範囲で途中入場いただける扉と、タイミングを決めているのです。


扉は、音が漏れないように厳重に作られていますので、扉の開ける順番を知らずに適当に開けてしまわれますと、非常にうるさい音が 水を打ったように静かな客席内に響き渡ります。外の扉を触っただけでも、その風圧で中にいる者が「あっ、誰か入って来る。」とわかります。光が入ることも非常にデリケートになっていますので、それもレセプショニストが最低限になるよう、気を配っています。もちろん、そのような音や光を非常に気にする出演者も多くいます。


どうか、途中入場の扉の指示は、お守りいただけますよう、ご協力くださいませ。



●開演前

開演前のベルで、客席ドアを閉め始めます。一人で数か所、何枚もの扉を閉めなくてはならず、緊張が走る瞬間です。


そのタイミングで、「今」でなくてもよいことについては、レセプショニストにお声を掛けるのは、控えていただけると有難いな…と、正直、思うことがよくあります。もちろん、座席がわからなかったり、必要なことはご遠慮なくお声をおかけください。


●終演時

終演後、レセプショニストがドアを開けるのは、客席の電気が灯ってから、という決まりがあります。それでもって終演となります。


ところが、仕方のないことなのですが、完全に電気が灯る前にお客様は座席を離れ始められます。それが早ければ早いほど、開演前と同じく一人のレセプショニストが数か所のドアを担当するため、順次開けていきますと、お客様がお出になるのに間に合わないということが発生してしまいます。


たいていは、全てのドアにレセプショニストが各々付くことは、人数の関係で物理的に無理と言えるはずです。その点はご理解いただきたいと存じます。


●開演中の退席

途中で帰らなければならなかったり、気分が悪くなったりと、演奏会の途中で外に出られることもあるかと思います。入る時にはデリケートにタイミングや場所が決まっていますが、出る分には仕方のない事態ですので、演奏の途中でもお出になって大丈夫です。


その場合、もし、レセプショニストのいるドアがお近くにありましたら、なるべくそこからご退出願いたいと思います。もし、いない場合は、左右両方の扉に手を当て、同時に軽く押してみてください。すると、どちらか片方の扉が先に開きますので、その動いた扉の方を開けてご退出ください。


●その他

時々、遅れていらしたお客様が、内側と外側の扉の間の「前室」という空間で、お聴きになりたいというお申し出がございます。しかし、いかにも気分が悪くなりそうな暗くて狭い空間でもありますし、レセプショニストが付きっきりで居るわけでもありませんのでお気持ちは理解出来ますが、やはり次のタイミングまでモニターでご鑑賞いただきたいと思います。