その日、チャンミンはいつもと変わらずに帰宅したが、ユノはすぐに気がついた。

実家の輿の匂いがユノの鼻先をかすめたけれど、チャンミンはユノの実家に行ったことを黙っている。

夕食のときにでも話題にしてくれるかと思っていたのに、一言も触れなかった。

チャンミンが俺に秘密を持っている。

仕事のことなど、すべてをユノに話しているわけではないけれど、パートナーの実家を訪ねたことをなぜ隠すのか、ユノには理解できなかった。


「…チャンミン。」

「ん?あ、そうだ今夜はこの後会社に戻らなきゃならないんだ。ユノと夕食を取りたくて一旦帰宅しただけなんだ。帰りは遅くなるから、先にに寝てていいからね。」

「…分かった。会社抜けて来てくれてありがとう。」


ユノは、隠し事をされたということがショックで、チャンミンに実家に行ったのかと訊くことができないでいるまま、再び会社へと出かけるチャンミンを見送った。

チャンミンは夕食をとっている間に用意させた夜食を持って会社に戻っていった。

ということは、帰りはかなり遅くなるだろう。



真夜中。

ユノはきつねの姿のまま庭にいた。


『チャンミン…』


月の光が眩しくてキュッと瞑ったユノの目からポロポロと涙がこぼれた。


『仕事のじゃまをしてはいけないとヒチョリヒョンから言われたじゃないか。なのに、俺は…』


ふるふると頭を振り、宙返りをして人間の姿に戻ると、ユノはしょんぼりと寝室へ入っていった。



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