光の粒のスクリーンに映し出されたのは、ドフンが顔を真赤にして俯いている姿でした。
しかし、その目の前にいるのは男性の人魚です。
はて?
二人の会話はどう見ても恋の告白の一歩手前でした。
人魚はドフンの熱を冷ますかのように優しく交わしています。
そして、最後に釘を刺しました。
「言うな」と。
「ユン様、もういいです…」
ドンジュがポツリと言うと、ユンが指を鳴らし、光のスクリーンが消えました。
「ドフン、ごめん。応援してあげられない。」
ガックリとうなだれたドンジュにユンが尋ねました。
「なぜ?男性だから?人魚だから?」
「僕らがまだどちらも継承候補者だから。」
きっぱりとドンジュは言いました。
「僕らは元服したばかりで、まだまだ学ばなければならないことがあるんだ。まだどっちが継承者になるかわからないのに恋愛はできない。国の民にも示しがつかないし、お相手にも失礼だ。」
みんな黙ってしまいました。
ユンはドンジュの頭をよしよしと撫でました。
「ドフンはきっと分かってるよ。あの人魚も。」
戻ってきた龍から何やら聞いているユンは神妙な顔つきになっています。
「ドンジュ、あの人魚は訳ありだね。本人もそれを自覚しているらしい。」
「…そう。危険な目にあってなくてよかった。」
「お茶を淹れ替えようね。茶葉を変えよう。ちょっと待ってて。」
ユンは、女官を一人連れてテラスから室内へ入っていきました。
沈黙に耐えきれなくなってヒグマのCQが口を開きました。
「ドフン様は、ここに来てから毎朝会話を交わしてあの人魚と親しくなったようです。それにしても、あの踊り子と同一とは思いませんでしたが。」
あの踊り子とは、奉納剣舞が会った日に広場のステージで数人で踊っていた踊り子のことで、ドフンはステージ袖まで行ってバラの花をプレゼントしたのです。
「えっ?そうなの?あの踊り子さん、男の人だったの?」
「いえ、あの姿は完全に女性です。あの者は人型と本来の姿で性別が違うのです。ですから、どちらも本当の姿です。苦労したのではないでしょかうか。本来の人魚の専売特許でもある歌声を持たずに生まれてきたはずですから。」
しみじみとヒグマのCQは話し終えました。
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