前菜の盛り合わせも、玉子焼きも、刺身も、父さんたちは旨い旨いと食べているけど、僕は砂を噛むような気持ちで咀嚼していた。
食事はアワビご飯で、これもただひたすら咀嚼した。
料理の器が全て下げられて、食後のコーヒーとデザートが運ばれてくると、父さんとユノのお父さんは何やら頷きあう。
「チャンミンくん。倅とはどうなっているのかな?」
チラリと父さんを見ると、僕のことなど気にするふうもなくコーヒーを飲んでいる。
僕は、ユノとのことを家族には話していなかった。
血が一気に上がって下がった。
手が冷たく震えている。
どうしよう。
瀬戸際ってこういうことをいうのだろうか。
考えろ。
今この場で言うべきことを考えるんだ。
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