もう腹をくくるか。
この三人なら騒いだりはしないだろう。
「俺は、恋愛の対象が同性なんだ。だからといって、自分の部下をそういう目で見たりはしないが。でも、同性の恋人がいる。恥ずかしいことだと思ったりはしてないが、まだまだマイノリティだ。君達はそういう人間のもとで働けるか?」
三人は、お互いに顔を見合わせたりすることもないまま、同様に大きく息を吐いた。
「部長、僕ら知ってましたよ。」
え?
「知ったのはホントに偶然なんですけど。」
「あいつらも全員知ってます。」
テミンがフロアの方を見ると、全員がこちらを見ていてビックリした。
ミンホが誰かを手招きで呼んだ。
「失礼します。」
入ってきたのはヒョンシクだった。
「最初に知ったのはこいつです。」
ミンホがヒョンシクの肩に手をおいてニッコリとすると、ヒョンシクは頷いて話し始めた。
「僕の兄があの街でバーをやってるんです。」
ヒョンシクはその兄さんに頼まれて届け物をしたときに、通りで偶然俺を見たらしい。
「すみません。気になって後をつけたんです。そしたら、兄貴の店に入ったから…」
なるほど。
そういうことか。
「僕の兄貴の友達とか、周りにたくさんいるので何の偏見もありません。でも、マイノリティであることは十分承知してます。だから、最初どうしようかと悩みました。」
少し俯いてこめかみを指先で触りながら、ヒョンシクは続けた。
「どうすれば部長を守れるかなって。」
え?
「部長はカムアウトしてないから、これから何か起こるかもしれません。そうなったとき、僕一人では守りきれないから…」
え?
「それで、ミノ先輩に相談しました。」
ミンホは良くできました言うかのようにヒョンシクの頭をクシャッとした。
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