「お前が何を求めて今ここに来てるのか分からねえよ。」


「ジュン兄…」


カフェからバーに切り替わる合間に時間を作ってくれたジュンヒョンは、カウンターの向こうで後ろに寄りかかり腕を組んでいる。


濃い色が入った眼鏡をかけているけれど顔は俺にまっすぐ向いていて、レンズの奥の目は俺を睨み付けているに違いなかった。


「お前の親父さんがチャンミンとやらに言ったことも、それに対してそいつがお前から離れようとしたり、今も何か考えているというのも、俺はよく分かるぜ。」


「…っ、オレだって!」


「いや、お前は分かっちゃいねえよ。俺はゲイではないが、彼らが苦しんでいる姿を見てるから辛さは知っているつもりだ。周囲にカミングアウトした途端にパートナーが去っていったと言って泣いていた奴もいた。職場を去らざるを得ない状況になった奴もいる。お前は同じような思いをしたことがあるのか?」


俺は何も言えなかった。


学生の頃も、現在も、俺は周りの人間に守られている。


もしかしたら、俺の耳に入らないだけで話題にされているのかもしれないけど。


それでも、俺は直接不快な目には遭っていない。


「いいか?よく考えろ。どうするのがお前らにとって良いことなのか。二人で考えてみてもいい。しかし、その前に一人で考えてみるんだな。」


ジュンヒョンはそこまで言うと、俺の頭をガシガシと乱暴に撫でながら「せっかく来たんだからメシ食ってけ。」とニヤリと笑った。



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