※別ブログに載せていたお話です。
仕事に没頭することで無理矢理自分を保っていた。
終業時刻になり、フロアにいる部下たちは次々に帰り支度をして席を立っていく。
俺のオフィスは小部屋とはいってもガラス張りに近い。
目が合った一人の会釈に応えたら、次々に頭を下げていく。
手を振って殆どを送り出すと、どうやら最後らしいイ テミンがやって来た。
「部長、帰らないんですか?」
「帰るよ。もう、パソコンきるだけだ。」
「…ならいいんです。」
「どうした?」
何も言わずに首を横に振るが、その表情は『いい』という顔ではない。
「テミン。」
「…みんな、心配してます。そんな顔で出社して、ここから一歩も出ずに…絶対何かあったんだと思うけど、部長は自分からは絶対話さないから…」
「それで、お前が代表として訊きに来たのか?」
「…っ、そんなんじゃ…僕はただ…」
テミンは俯いてしまった。
「分かってるよ。ごめんな、意地悪な言い方して。今余裕ないんだ。」
「僕らでは力になれないんですか?」
「個人的なことだから、気持ちだけ貰っとく。ありがとうな。ほら、もう帰れ。」
肩に手をかけて向きを換えさせると、テミンは諦めたのか小さくため息をついた。
「二、三日なら僕らでカバーできますから、休暇を取られては?」
休暇…
「考えとくよ。」
テミンはドアに向かって歩きながらも、振り向き振り向き言った。
「ホントですよ!」
俺はオフィスのドアに寄りかかってテミンを見送りながら、休暇のことを考えていた。
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