※別ブログに載せていたお話です。




ふと気がついた。


あいつからのメッセージには、別れようとかなんて一言も書いてないじゃないか。


単に待ち合わせの時間厳守でってことなんじゃないか?


バカだな、俺。


勝手に思い込んで焦ったりして。


時間に間に合わなかったから、きっと帰っちゃったんだ。


よし、あいつの家に行こう。


スマホを取り出してメッセージを入れても既読にならないけど、それは移動中だからかも知れない。


地下鉄で30分。


もしかしたら、駅からマンションの道で追い付くかもしれない。


なんて声をかけようかと考える。






通いなれた駅。


改札を通れば自然と足が動く。


駅から5分のマンション。


道路の反対側の角部屋だから窓が見えない。



ワインでも買ってくればよかったかな。




インターホンを鳴らすけど応答がなくて、帰ってきていないのかと思い、スマホを取り出したところで隣の部屋のドアが開いた。



「そこは空き部屋ですよ。」



え?


初対面のその人は明らかに不審者を見る目で俺を見ている。



「あの、空き部屋って…」


「先週引っ越していかれましたよ。挨拶されたから間違いありません。集合住宅なのでお静かに。」



ドアは静かに閉まり、カチャリとロックがかかる音がした。




え?


引っ越した?


先週?



先週って、俺の部屋で会った…


あの時何も言ってなかった。





ガタガタと震える手で持つスマホからは呼び出し音しか聞こえない。




そうだ、カトク!



さっき送ったメッセージが既読になってるかもしれない。



カトクを開いた俺は呆然とした。





あいつのアカウントが消えていた。



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