地下駐車場を出た車は社屋正面の車寄せに止まり、僕が降りて後部座席のドアを開けると、同じタイミングで正面玄関が開いてオク テギョンとパク シンヘにエスコートされて社長が出てきた。



「ご苦労様。いつもながらいいタイミングだね。」


「ありがとうございます。」


「二人とも、もういいよ。ありがとう。」


「よい週末を。」



テギョンとシンヘに見送られつつ、車はゆるゆると走り出す。



「ふー、今週も終わった。」


「お疲れさまでした。」



社長は僕を見て、ムッと口を尖らせた。



「もういいだろ、チャンミナ。」


「ふふ。」



運転手がチラリと僕と社長を見た。



「ユノ。」


「ん。今日はその眼鏡なんだ?」


「ユノと一緒にいるからね。」


「ふーん。」



ユノは口許に手を当てて外に視線を移したけど、頬骨が上がっていてニヤついているのが丸分かりだ。



「前髪をあげてるのもめずらしいよな。」


「誰かさんがこういう髪型が好きなんだよ。だから。」



窓ガラスに映る瞳がクルリと動いた。



「今夜は…」


「イタリアンを予約したよ。ユノ、行ってみたいって言ってたでしょ?」


「うん。」





社長の顔から幼馴染みの顔に戻った愛しい人は、花が綻ぶような笑顔で振り向いた。



「チャンミン、今夜もかっこいいね。でも、仕事のときはそんなにかっこよくしちゃダメだから。」


「ヤキモチで部下を飛ばすのはもう勘弁してね。」


「あれは、あの子がチャンミンに前髪あげろとか眼鏡外せとか言うからだもん。」



運転手がやれやれというふうな目でバックミラー越しに僕を見た。



「シムさん、秘書室長じゃなくて社長秘書になればよろしいのでは?」


「余計なこと言わなくていいんですよ。」


「それ、いい考えじゃん。人事部に提案してみよっと。」


「ユノ。公私混同はダメだよ。」


「ちぇっ。」



クスクスと笑う僕に寄りかかるようにしてユノは不貞腐れるフリをした。




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