朝食の後ゆっくりコーヒーを飲む間もなく、チャンスニはダイニングテーブルの上にクッキー作りの用意を始めた。

僕は、チャンスニの表情、手元、製菓道具の色々をカメラに収めていく。

ふと気がついた。

「スニちゃん、その前掛け…」

うちにあったものではない。

「前に買って使わずに持っていた物よ。やっぱり、この形がしっくりくるわ。」

それから、チャンスニは無言でクッキーを焼き続けた。

焼き上がったものを網にのせて冷ましていく。

「チャンミン、味見。」

まだ少し温かいクッキーを掌にのせてくれた。

少し硬めなのはこれからアイシングするかららしい。

「美味しいよ。」

モグモグと口を動かしている僕の側に、牛乳が注がれたマグカップが置かれた。

「当たり前よ。ただのソンムルクッキーじゃなくて、食べても美味しくないとね。」

午前中に焼いて冷まされたクッキーは午後アイシングでデコレーションをするという。

クッキーを一枚食べて刺激されたのか、お腹が減ってきた。


「スニちゃん、お昼さあ、外で食べない?」

甘く香ばしい匂いをそのままにしておきたかった。

そのままのほうがモチベーションが落ちないと思ったんだ。

「いいわよ。どこに行くの?」

「ランチが美味しいカフェがあってさ。僕の写真も飾ってもらったりしてるんだよ。」

チャンスニはパタパタと軽く片付けて、身支度を整え始めた。