つい訪れてしまうというのを繰り返して、3日ほど通ってしまっている。

俺にとって非日常の感じが居心地いい。



「チャンミン、どうぞ!」

目の前に置かれた小さめのオーバル型のプレート。

「今日はバナナケーキだよ。ホールの型で焼くより、パウンドの型で焼く方がオレは好きなんだ。」

優しい甘さでしっとりとした食感は何となくユノの雰囲気と重なる。

俺の食べっぷりに満足してユノはカウンターの向こうに引っ込んでいった。

最後の一口まできれいに食べて、コーヒーを飲み干したところで隣に誰かがドスンと座った。

「ソウルから来た旅行者ってアンタ?」

明らかに敵意を感じる口調に驚いて振り向くと、薄めの色のサングラスをかけた男が俺を睨んでいた。

何かやらかしたかな。

「確かにソウルから旅行で来ているけど…」

「何しにきた?」

今にも俺に食いつかんばかりだけど、なんでこんなに絡まれなきゃならないんだろう。

「チョル!チャンミンに絡むの止めろ!」

いつの間にかユノが出てきていた。

「ヒョン、こいつはソウルから何しに来たんだ?」

「こいつなんて言うな、チャンミンはオレの友達だ。」

「友達?ダメだ!ソウルから来たやつなんだろ?絶対ダメだ!」

チョルと呼ばれた男は目に涙を浮かべながらユノにしがみついている。

「チョル、大丈夫だよ。チャンミンはああいう世界の人じゃないんだ。お休みに旅行で済州島に来てるだけなんだよ。」

「でもっ!でもっ!」

「本当に大丈夫だから。」


ユノは、グシグシと泣き出してしまった彼を宥めながら、俺に声を出さずに「ゴメン」と言った。