急に暗くなってきて、将軍も王も驚いて空を見上げた。

太陽が欠けてきている。

とうとう天変地異かと一瞬思ってしまうくらいの速さで欠けていく。

「日蝕か…」

既に半分以上欠けてきている。

皆既日食ではなく、今回は月のほうが少しだけ近いところにあるために月の周りに光の環がてきている。

将軍は思わず手を伸ばした。


「あれ?」

蜘蛛の巣のように全身に絡みついていた水が離れていく感覚があった。

起き上がって手で水をすくってみると、それは極々普通の水だった。

将軍が慌てて立ち上がると、壁の向こうから同じような水音が聞こえた。


もしかして…


「チャンミン?」

水音が聞こえた方の壁に手を当てて、もう一度呼びかける。

「チャンミン!」


将軍は壁をよじ登り始めた。

石を積んで造ったと思われる壁は手をかけるところも足をかけるところもたくさんあって、なぜ今まで脱出を試みなかったのかと悔やまれる。

思いのほかスイスイと登れて、縁に手と足をかけて登りきったとき、すぐ隣に同じような石の壁があることに気がついた。

「まさか」

息を呑んで見つめていると、その石の壁の縁に手がかかり、栗色の頭が出てきた。

「チャンミン!」

栗色の頭が振り向くと、大きな目を更に大きく見開いている王の顔があった。

「ユノ!」

王であるチャンミンと、将軍であるユノは、やっと対面することができた。


ユノと同じように縁に座ると、チャンミンは大粒の涙をこぼしながらグズグズと泣き出した。


「泣くなよ。まだ下に降りてもいないんだ」

「だって… 」

涙を手で拭い、照れ隠しからか頭をブルンと振ったとき、チャンミンの身体が大きく揺れた。

「あっ!」

「チャンミン!」


次の瞬間、チャンミンは塔の上から落ちた。