屋根のない牢獄に落とされてどれくらいの月日が経ったのか。

足首ほどの深さしかないはずなのに、床を覆う水は全身の力を奪う。

日が昇り、沈み、月が浮かんで形を変えていく。

くる日もくる日も光の強弱と月の形を眺めるだけ。

あの人はどうしているだろうか。


まさかお互いが並んでいる牢獄に落とされているとは、知る由もなかった。

サラリとしているようで蜘蛛の糸のように絡みつく水は、罪人たちの肉体から気力を削いでいく。

初めは何故自分がこのような目に遭うのか分からなかったが、外の様子が音だけでも伝わってくると次第に自分が犯した罪に気づき始めた。


おかしい。

自分が治めていた国はこんな荒れた騒がしさなどなかったはずなのに。

なぜこんなに悲鳴が聞こえるのか。

あれは何の音だ?

暴動でも起こっているのか?

何故暴動など起こるのか。

いつのまにこの国はこんな騒がしくなってしまったのだ。

怒りと悲しみしか聞こえてこない。

これが、自分が治めていた国なのか?


王の眼から涙が伝う。

次々に溢れる涙は、床の水と同化していった。