「さっきはどこに行ってたの?」
朝食のとき、ドンジュから尋ねられたのになんとなく濁してしまったドフンは、ずっと先程の人魚の青年のことが気になっていました。
海がない西の国では魚といえば川に住む魚で、チャンスンのような真っ赤で鮮やかな魚は見たことがありません。
そして、人魚を実際に見たのも初めてでした。
チャンスンは水に濡れた身体に朝日が反射してとても綺麗で、大きな目はニコリと笑ったときに片方だけより細くなりました。
「ドフン、どうしたの?早くごはん食べてカーニバルを見に行こうよ。」
既に食べ終わっているドンジュが不思議そうな顔をしていました。
「あ、うん。」
ドフンは慌てて食べ始め、ドンジュは食後のコーヒーを飲みながらCQとあれこれ喋っていました。
バザールは昼前から既に賑わっています。
綺麗な髪飾りを見つけた双子は、それを後宮の女たちへのお土産にしました。
全員分の髪飾りを選んでいたので思いの外時間がかかり、買い物が済むと昼食に丁度いい時間でした。
皆で屋台で買ったものを食べていると、広場から音楽が聞こえてきました。
「なんだろう?」
すると、屋台の店主が答えます。
「踊り子の舞台ですよ。」
「ねえ、行ってみよう?」
踊り子と聞いて一瞬眉をひそめたCQですが、これも社会勉強かと思い、頷きました。
広場の舞台ではまさに始まるところでした。
真っ赤なドレスを着た女性たちが踊り始めます。
「あ。」
ドフンは踊り子の一人に目が釘付けになりました。
朝、出会った人魚によく似ているのです。
着ているドレスの赤と黒の配色がチャンスンの尾びれの色と同じです。
「…でも、あの人は女の人だ。」
ドフンはポツリと呟きました。
その呟きは音楽と客席の歓声にかき消され、隣にいるドンジュにも聞こえませんでした。
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