列車は心地よい揺れと共に走ります。
「ドフン様、ドンジュ様、そろそろ小麦の虎が見えてきますよ。」
護衛の一人が外を指しました。
広大な小麦畑に浮かび上がる虎は、列車に乗って旅立つ民を見送り、訪れる民を出迎えるため、西の国の名物でもあります。
今の時期、小麦畑は青々としています。
双子たちは、窓に張り付いて小麦畑を見つめました。
「あっ」
小麦が風に揺れて、走っているかのような虎の姿が見えました。
「凄いね!」
「綺麗だね!」
他の車窓からも、そのような声が聞こえてきます。
「あの仕組みはどうなってるんだろう?」
ドンジュは小麦の虎をじっと見ていました。
小麦畑を過ぎた頃から、急に曇り始めたのか、車内が少し暗くなりました。
「曇ってきましたか?」
CQが外を見ます。
しかし、双子たちは気づいていました。
「…いたよね。」
「…うん。」
小麦畑を通りすぎるとき、光がスッと列車から離れたのを見たのです。
「ホジュン様だけだと思う?」
「や、たぶんスンウォン様とヘジン様もいたと思う。」
双子の会話を聞いて、CQがニッコリとしました。
「あのお三方には、特に選りすぐったお土産を探しましょう。」
~白虎の舘~
三つの光の玉が降り立ちました。
「おかえりなさいませー」
ポリとサンチェが小走りで出迎えます。
そのあとをついてキョウルもやって来ました。
「王子様たちは無事に旅立たれましたか?」
「小麦畑まで見送ってきたよ。二人とも楽しそうだった。」
「あずまやにお茶の用意をしてますから。」
小柄な三人はじゃれつくように、さあさあとホジュンたちをあずまやへ連れていきました。
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